第3話

2真夜中のキッチン
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2026/02/15 07:52 更新
『深夜2時
シェアハウスの共用リビング』
照明は消えていて、キッチンからの微かな明かりだけがついている
奏紫
……はぁ。
いるまが1人、カウンターで冷めたコーヒーを前に俯いている
手元のスマホには、心ないアンチコメントや、「もっと頑張れ」という期待の声が並んでいる
奏紫
……頑張ってるっつーの。
……これ以上、どうしろってんだよ。
いるまは頭を抱え、深くため息をつく。
その時、背後の廊下からギシッと床が鳴る
奏紫
……っ!?
慌ててスマホを伏せ、表情を作る。
暗闇から現れたのは、スウェット姿で目をこする「らん」だった
奏桃
……んー、喉乾いた……。
奏紫
……なんだ、らんか。驚かすなよ。
奏桃
それはこっちのセリフ。
……何してんの、こんな時間に。
奏紫
……別に。ちょっと目が覚めただけ。
すぐ寝るよ。
いるまが立ち去ろうとした瞬間、らんがその腕を掴む
奏桃
待て。
奏紫
……な、に。
奏桃
お前、昨日もこの時間
起きてたよな。一昨日も。
奏紫
……。
奏桃
お前の部屋、俺の隣だろ。……寝返りの音も、
ため息も、全部聞こえてんだよ。
奏紫
……っ。
らんは掴んだ腕を離さず、いるまの顔を覗き込む。廊下の常夜灯に照らされたいるまの目は、赤く腫れている
奏桃
……お前さ。シェアハウス、
なんだと思ってる?
奏紫
……ただの、仕事仲間との住居だろ。
奏桃
違う。……『家族』だろ。
奏紫
……。
奏桃
辛い時に1人で抱え込むなら、
わざわざ一緒に住んでる意味
ねーじゃん。
奏紫
……らんには関係ないだろ。
これは俺の問題で……。
奏桃
関係ある。お前が暗い顔してると、
グループの空気も、俺の気分も
最悪なんだよ。
らんは空いている方の手でいるまの頭を
乱暴に、でも優しく撫でる
奏桃
……一人で戦ってるつもりになんな。
横を見ろ、馬鹿。
奏紫
……。
いるまの目から、堪えていた涙が一粒こぼれる
奏紫
……だって、俺が……俺がもっと完璧にやんないと、シクフォニが……。
奏桃
そんなこと、メンバーの誰も望んでない。
奏桃
ほら、座れ。ココア淹れてやるから。
……全部話すまで、部屋には戻さないからな。
奏紫
……はは。……鬼リーダー。
奏桃
なんとでも言え。……俺の前でぐらい、
ただの『いるま』に戻れよ。

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