千トと誠一が出ていってから数時間後、いつも通りの朝がやってきた。いつもなら誠一の作った朝食と健三が入れた紅茶の匂いで包まれた温かな事務所がそこにはある筈なのに今日の朝は何処か冷たい。そして誠一のあの声ではなく星喰兄弟と健三の何処か慌てる声のみが響いていた。
まどかはゆっくりと体を起こし健三に何があったかを問う。すると健三から返ってきたのは
その一言だった。
まどかはその一言が信じられず目を見開いたままそう言の葉をこぼす。
あの星喰兄弟も珍しく慌てている。それだけ千トのことが大切なのだろう。
健三の声もどこか震えている。普段、誠一に対して毒舌ではあるが同じハウスメンバーなのだ。居なくなってしまっては困る存在。心配で心配で仕方ないのだろう。
まどかは寝起きの頭を無理に起こし記憶に潜る。自身の目に映る2人の姿から居なくなった原因が分かると信じて。
千トと誠一の捜索を始めてから早数時間が経った頃。
左手はハッキングした監視カメラの映像を指さし右手、まどか、健三の3人に聞こえるボリュームでそう告げた。
3人は左手の元へ駆け付け監視カメラの映像を確認する。するとそこには"どこかへ向かい走る千トと誠一"が映っていた。
まどかと健三は自身の管理区域、また他の交流のある管理区域でもない地区のため監視カメラに映る2人が通ったであろう場所の推測がつかないでいた。しかしその隣にいる星喰兄弟はそうでもなさそうである。
双子は互いに顔を合わせ外へ出る準備を始める。しかしそれについていけないまどかと健三は双子を呼び止めた。
支度を済ませた4人は右手の言う"あの日の…"に当てはまるであろう場所へと向かった。
そして今。大陽は傾き、カラスが鳴く夕方。あの日、初めてあった時と変わらない今。目の前にいるあなたは私を見て、私たちを見て驚いた顔をする。
私が名前を呼べばあなたは目を見開き一言。
そう言った。
当たり前じゃないですか。私が、私たちはあなたたちと離れることを望まなかったからですよ。だから私たちはあなたの元へ向かったのです…












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。