第22話

あなたの元へ
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2025/07/22 16:53 更新
千トと誠一が出ていってから数時間後、いつも通りの朝がやってきた。いつもなら誠一の作った朝食と健三が入れた紅茶の匂いで包まれた温かな事務所がそこにはある筈なのに今日の朝は何処か冷たい。そして誠一のあの声ではなく星喰兄弟と健三の何処か慌てる声のみが響いていた。
まどかはゆっくりと体を起こし健三に何があったかを問う。すると健三から返ってきたのは
神柴健三
誠一くんと千トくんがいません!
その一言だった。
恵美まどか
は?
まどかはその一言が信じられず目を見開いたままそう言の葉をこぼす。
星喰右手
左手!ハッキングはまだですか?!
星喰左手
今やってっけど何処にも写ってねぇんだよ!
あの星喰兄弟も珍しく慌てている。それだけ千トのことが大切なのだろう。
神柴健三
まどかさん…どうしましょう…
健三の声もどこか震えている。普段、誠一に対して毒舌ではあるが同じハウスメンバーなのだ。居なくなってしまっては困る存在。心配で心配で仕方ないのだろう。
まどかは寝起きの頭を無理に起こし記憶に潜る。自身の目に映る2人の姿から居なくなった原因が分かると信じて。
千トと誠一の捜索を始めてから早数時間が経った頃。
星喰左手
…いた!いたぞ!
左手はハッキングした監視カメラの映像を指さし右手、まどか、健三の3人に聞こえるボリュームでそう告げた。
恵美まどか
本当?早く見せて!
神柴健三
誠一くん…!!
星喰右手
左手、どれです?!
3人は左手の元へ駆け付け監視カメラの映像を確認する。するとそこには"どこかへ向かい走る千トと誠一"が映っていた。
恵美まどか
これ…ここから大分離れてる…
神柴健三
ここ…何処でしょう…
まどかと健三は自身の管理区域、また他の交流のある管理区域でもない地区のため監視カメラに映る2人が通ったであろう場所の推測がつかないでいた。しかしその隣にいる星喰兄弟はそうでもなさそうである。
星喰左手
なぁ…兄貴
星喰右手
おそらく…あの日の…
双子は互いに顔を合わせ外へ出る準備を始める。しかしそれについていけないまどかと健三は双子を呼び止めた。
恵美まどか
ちょっ、何処行くの?!
神柴健三
そうです!我々だって知る権利はある!何処へ行くのか言って下さい!
星喰右手
何処へって…千トと誠一くんの元です!
星喰左手
ついてくんなら早くしろ!ここから大分遠いんだ!
恵美まどか
はっ、はぁ?!
神柴健三
説明無し…仕方ありません…まどかさん行きましょう!
恵美まどか
ッ〜!!!わかったよ!行こう!
支度を済ませた4人は右手の言う"あの日の…"に当てはまるであろう場所へと向かった。
そして今。大陽は傾き、カラスが鳴く夕方。あの日、初めてあった時と変わらない今。目の前にいるあなたは私を見て、私たちを見て驚いた顔をする。
星喰右手
千ト
私が名前を呼べばあなたは目を見開き一言。
皇千ト
どうして右手くんがいるの…?
そう言った。

当たり前じゃないですか。私が、私たちはあなたたちと離れることを望まなかったからですよ。だから私たちはあなたの元へ向かったのです…
…引き裂かれ、紡がれ…これは運命と言うやつだね
そうだよ、良くわかってるじゃないか
ふふっ、どっちに転ぶかな
分かってるだろ?つまらないことを言うな
…そうだね、でも僕的にはこっちがいいな〜
はっ、彼奴等はあっちがお似合いだ
まっ、僕らには見守ることしかできないんだ。幸せに巡り会えるように祈っとこ〜
ふふっ、そういうのもありだな

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