夕暮れ時。古びた神社には6つの影がのびる。
突如居なくなった千トと誠一を追いかけこの神社に辿り着いた右手とまどかは事務所へ帰ろうとそう声を掛ける。が千トと誠一からの返答はない。
同じく千トと誠一を追ってここに辿り着いた左手と健三もそう声を掛ける。が結果は変わらない。2人は俯いたまま4人を直視しようとはしなかった。
しばらくの間、沈黙が続く。
鴉が鳴いた時、千トはゆっくりと口を開いた。
ようやく口を開いたと思えば千トの口から出たのは"帰らない"という言葉だった。でもその声はどこか震えていて冷たく、いつもの温かな言葉ではない。
まどかが問う。
が千トは変わらず
と答えるだけだった。
それに怒りのような、なんとも言えない感情をまどかは感じ始める。
右手に突然振られたからなのか少し目を見開いた後、視線を逸らし気まずそうにする。
右手は問う。帰りたいのか、そうでないのか。
誠一の返答は
"帰りたい"だった。その返答にまどかは少し笑みを浮かべる。まどかは千トにもう一度問いた。本当はどうしたいのかを。とある一言を添えて
まどかは笑ってそう言う。
千トは俯いた後、少し悲しそうな顔をしながら笑ってまどかの推理を肯定した。
少し前にあった誘拐騒動。その騒動が収まったかと思えば裏社会を通じ皇千トと踏分誠一は妖怪である。という噂が出回った。それから依頼の先々で野党に襲われることが多々あったのだ。
だから帰れない。と千トが言おうとした時、誠一が後ろから抱きついてきた。
千トは頬に触れる。どうやらしゃくりを上げることもなく泣いていたようだ。
〈帰路〉
事務所へ帰る道中、千トは今までの鎖を落とすことができたのか安心した顔で眠りに付いていた。それを見て周りは微笑む。
千トの髪を優しく撫でる。少し千トが微笑んだような気がした。やっぱり説教は取り消してパンケーキでも食べようか。そう双子は思ったとか。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。