いつものように、生徒会室にきて、扉を開けた。
_すると、中にはいつもとは明らかに
違う空気が流れていた。
同級生のみかさが、なぜか机に突っ伏して
耳まで真っ赤にしている。
その隣で、広報の資料をめくるメルトの耳元も、
ほんのりと赤かった。
「……あれ? 二人とも、なにかあったん?」
「あ、らぴす……!
聞いてよ、俺、ついにメルトと……っ!」
「みかさ、うるさい」
毒舌だけど、メルトの声はどこかいつもより優しくて
少し照れくさそうだった。
二人がついに付き合うことになったのだと察するのに、時間はかからなかった。
「おめでとう……!」
笑顔でお祝いを言ったものの、
俺の胸の奥には、小さくて少し複雑な感情が
チクリと芽生えた。
_ずっと三人でバカ話をして、同じ目線で笑い合ってきたみかさとメルト。
そんな二人が、俺の知らない特別な関係になって、
なんだか、急に遠くへ行ってしまったような気がした。
置いてけぼりを食らったような切なさが、
胸の奥をチクチクと刺す。
「お、らぴす、お疲れ……って、
なんか暗い顔してない? 体調悪い?」
振り返ると、そこには心配そうに、俺の顔を覗き込む
心音先輩がいた。
その優しい瞳で見つめられた瞬間、胸の奥に溜まっていた寂しさが、じわっと溢れそうになる。
「体調、悪くないです。
……ただ、なんだか少し、寂しくなっちゃって」
「寂しい?……何があったんだ?」
俺がぽつりと本音を呟くと、先輩は不思議そうに
眉を下げた。
本気で心配してくれているのが伝わってきた。
先輩は、みかさとメルトの視線を気にするように
チラリと見た後、少し真面目な顔をして
俺との距離を詰めてきた。
「……らぴす、ちょっとこっち」
そう言って、先輩は二人に聞こえないくらいの
低い声で囁くと、俺の制服の袖口を小さく引っ張った。そのまま、生徒会室の隅にある資料棚の陰へと俺を促す。
「みかさ達、なんかいつもと雰囲気違うだろ。
らぴす、何かあったのか?」
棚の陰に隠れて二人きりになった瞬間、
心音先輩が声を潜めて聞いてくる。まだ事情を知らない先輩の真っ直ぐな視線が、なんだか妙に眩しかった。
「……実は、みかさとメルトが、付き合うことになったみたいなんです」
資料棚の陰、先輩とかなり近い距離で、
俺は声を潜めて打ち明けた。
「え、あいつらが?」
心音先輩は少し目を見開いて、棚の向こうの二人を
チラリと見た。それから納得したように「あぁ……だからか」と小さく呟く。
「… 応援してたから嬉しいけど、急に遠くに行っちゃった気がして……」
「…うん」
「ずっと同じ目線でワイワイやってきたのに、
置いてけぼりにされたみたいで、ちょっと寂しくなっちゃいました」
先輩は少し躊躇うように手を伸ばすと、
俺の頭をポン、と軽く叩いた。
「そっか。
……でも、お前が一人になるわけじゃないだろ」
そう言って、先輩は俺の目を真っ直ぐに見つめてくる。こういう時の先輩の視線は、ずるいくらいに
真剣で心強い。
「あいつらが二人の世界に入ってるときは、
俺がいくらでも相手してやるから。
……だから、そんな顔すんな」
「…はい、!」
不器用だけど、俺を元気づけようとしてくれる先輩の
優しさに、胸の奥がぎゅっと熱くなる。
__先輩のこの言葉だけで、さっきまでの寂しさは
どこかへ消えて、俺の心は一瞬で満たされてしまうのだった。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。