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第19話

「ほんの少しの寂しさ」
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2026/07/04 12:00 更新
いつものように、生徒会室にきて、扉を開けた。

_すると、中にはいつもとは明らかに
違う空気が流れていた。

同級生のみかさが、なぜか机に突っ伏して
耳まで真っ赤にしている。
その隣で、広報の資料をめくるメルトの耳元も、
ほんのりと赤かった。




「……あれ? 二人とも、なにかあったん?」

「あ、らぴす……!
聞いてよ、俺、ついにメルトと……っ!」

「みかさ、うるさい」




毒舌だけど、メルトの声はどこかいつもより優しくて
少し照れくさそうだった。
二人がついに付き合うことになったのだと察するのに、時間はかからなかった。




「おめでとう……!」




笑顔でお祝いを言ったものの、
俺の胸の奥には、小さくて少し複雑な感情が
チクリと芽生えた。

_ずっと三人でバカ話をして、同じ目線で笑い合ってきたみかさとメルト。
そんな二人が、俺の知らない特別な関係になって、
なんだか、急に遠くへ行ってしまったような気がした。
置いてけぼりを食らったような切なさが、
胸の奥をチクチクと刺す。




「お、らぴす、お疲れ……って、
なんか暗い顔してない? 体調悪い?」




振り返ると、そこには心配そうに、俺の顔を覗き込む
心音先輩がいた。

その優しい瞳で見つめられた瞬間、胸の奥に溜まっていた寂しさが、じわっと溢れそうになる。




「体調、悪くないです。
……ただ、なんだか少し、寂しくなっちゃって」

「寂しい?……何があったんだ?」




俺がぽつりと本音を呟くと、先輩は不思議そうに
眉を下げた。
本気で心配してくれているのが伝わってきた。
先輩は、みかさとメルトの視線を気にするように
チラリと見た後、少し真面目な顔をして
俺との距離を詰めてきた。




「……らぴす、ちょっとこっち」




そう言って、先輩は二人に聞こえないくらいの
低い声で囁くと、俺の制服の袖口を小さく引っ張った。そのまま、生徒会室の隅にある資料棚の陰へと俺を促す。




「みかさ達、なんかいつもと雰囲気違うだろ。
らぴす、何かあったのか?」




棚の陰に隠れて二人きりになった瞬間、
心音先輩が声を潜めて聞いてくる。まだ事情を知らない先輩の真っ直ぐな視線が、なんだか妙に眩しかった。




「……実は、みかさとメルトが、付き合うことになったみたいなんです」




資料棚の陰、先輩とかなり近い距離で、
俺は声を潜めて打ち明けた。




「え、あいつらが?」




心音先輩は少し目を見開いて、棚の向こうの二人を
チラリと見た。それから納得したように「あぁ……だからか」と小さく呟く。




「… 応援してたから嬉しいけど、急に遠くに行っちゃった気がして……」

「…うん」

「ずっと同じ目線でワイワイやってきたのに、
置いてけぼりにされたみたいで、ちょっと寂しくなっちゃいました」




先輩は少し躊躇うように手を伸ばすと、
俺の頭をポン、と軽く叩いた。




「そっか。
……でも、お前が一人になるわけじゃないだろ」




そう言って、先輩は俺の目を真っ直ぐに見つめてくる。こういう時の先輩の視線は、ずるいくらいに
真剣で心強い。




「あいつらが二人の世界に入ってるときは、
俺がいくらでも相手してやるから。
……だから、そんな顔すんな」

「…はい、!」




不器用だけど、俺を元気づけようとしてくれる先輩の
優しさに、胸の奥がぎゅっと熱くなる。

__先輩のこの言葉だけで、さっきまでの寂しさは
どこかへ消えて、俺の心は一瞬で満たされてしまうのだった。

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