玄関の鍵を閉めて、自分の部屋のベッドに、
顔を埋めるように突っ伏した。
(…先輩の手、あたたかくて、ほっとしたな……)
やっぱり、恋ってすごい。
一つの言葉や行動だけで、心が揺さぶられる。
「はぁ……」
ふところに手を当てて、小さくため息をつく。
(……好きって、言えへんかったな……)
大好きやのに、口に出せんかった自分が悔しい。
……今日こそは言うつもりやったのに。
いつも先輩のことを考えると、胸がぎゅっと締めつけられる。
情けなさと、ほんのちょっとの悔しさとが混ざって、体の奥がむず痒い。
スマホがピロン、と光った。
____先輩からや。
《無事に家に着いたか?》
それだけで胸がきゅんとする。
気がついたら、手が少し震えていた。
なんて、返すか迷ったけど、結局素直に返す。
《はい、無事に家に着きました》
心臓がバクバクして、息が少しはやくなる。
ベッドのシーツをぎゅっと掴み、スマホを胸に置く。
手元の画面には、先輩から新しいメッセージが届いていた。
《今日、らぴすと一緒に帰れて楽しかった。また、一緒に帰ろうな》
……え。
たったそれだけ。
「楽しかった」なんて、たぶん深い意味もない。
なのに、スマホを握る手が熱い。
(俺以外にも言うくせに……)
分かっとる。
先輩は、誰とでも楽しく話すし、だれと帰っても
同じことを言うんや。
それなのに、心臓がやたらとうるさい。
布団に潜っても落ち着かなかった。
並んで歩いてたとき、自然に歩幅を合わせてくれたこと。
さりげなく、車道側を歩いてくれたこと。
全部、ただの『優しさ』だって分かっとるのに。
心が落ち着かないまま、なんとか手を動かして、
返信を打った。
《俺も楽しかったです》
それが精一杯だった。
(先輩にとって俺は、、、何なの…)
胸の奥でじわじわと広がっていく。
先輩がくれた言葉が、あまりにも優しすぎて、
逆にその優しさが、空っぽに感じてしまう自分がいた。
「先輩は、俺のこと意識してないんかな…」
なんて、そんなの分かりきってたやろ。
何度も携帯を見返しては、先輩の顔が浮かんでくる。
そのたびに、胸が締めつけられるような気がして、まるで自分だけが浮いているような気がした。
____
時刻を見るともう22時だった。
寝ようと思って、布団に入るものの、
心臓がバクバクしていて、眠れない。
先輩の一言が、何度も頭をぐるぐる回っていて
気づけば、またスマホを開いてしまう。
(先輩への好き、止まらない……)
目を閉じても、先輩の顔が浮かんで、
ずっと、心の中でその言葉が鳴り響いていた。
「恋なんて、辛いだけやん…」
その言葉は、余計に自分を辛くさせるだけだった。
____結局、朝まで眠れず、朝日が差し込んだときに、
ようやく眠りについた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。