今は余計な言葉は要らない。
ただ、終わりにするだけだ。
何か悪かったですね。
というかカイ兄って狐のお面付けてたんだ、知らなかった。
うん、敵から見たらそんなものである。
それを止めに来たんですけどね。
引く事は絶対に出来ない。
だから、やるしか無いのだ。
私はそっと、水蓮に触れる。
水蓮を抜刀しながら私はそう言った。
確かに、それが出来たらどれだけ良い事か。
しないけどさ。
外見は普通でも“中身”は違う。
一生落ちることの無い“血”
それは“呪い”でもあるのかもしれない。
嗚呼………否定出来ない。
出来る筈が、無い。
だって、その通りじゃ無いか。
人殺しなのに変わりは無いし、化け物なのも変わらない。
何があろうとも“変わらない”のだから。
だってもう、隣に“大切な人”は居ないから。
失礼ですねぇ、否定はしませんけど。
虎鐘さんが木陰から出て来る。
失礼ですけど。
ごもっともでした。
刀を取り出すと依月さんは自分の首を真っ二つに斬った。
まさかの自死選択!?
自身の右手に爪を立て、斬りかかりたいのを必死に抑える。
すらと依月さんの死体が先程カイ兄の力が集結した時の飴のようになる。
私はじりっと一歩後退った。
飴のようなものを噛み砕くと、虎鐘さんの身体が眩しく光り、その光は瞬く間に周囲を包み込んだ。
私は慌てて目を瞑る。
だって目が痛いもん!
光の中に、白い翼の生えた虎鐘さんが微かに見えた。
見ただけで分かる、兎に角ヤバい。
そんな中、虎鐘さんは無言で歩み寄って来た。
そんな悠長な事は言ってられないので、構える。
刹那、一瞬で虎鐘さんは私の頭を掴んでいた。
早い………!
それ、私で色々と大丈夫かなぁ………?
うん、これは絶対間違いじゃないです。
まぁ、他にも理由はあるけど………。
まぁ確かに………色々とされたから許すかと言われればあんまり許したく無いくらいですもんね。
何とかしてくれると言ったんだ、なら信じてみるとしますか。
幾ら私とはいえ、羞恥心くらいはあるよ!?
分かってる、今はそんな状況じゃない事くらい!
でも、それでもだよ!?
虎鐘さんが私の頭を掴む力を強くした。
その時、私の中で何かがブツンッと音を立てて切れた。
それ以上は本当に頭が痛くなりそうだよ。
私は虎鐘さんの手を思い切り振り払った。
うん、なんかびっくりしてる、なんでだろ。
まぁ、良いや。
何せ私は、空気を読んだりするのが苦手である。
直後、私の左眼が光ったかと思うと、新月から光が降ってきた。
本当にそれだけはダメである。
周囲が光に包まれると、身体の中から凄まじい力が溢れ出てきた。
深呼吸をする。
……うん、大丈夫だね。
うん、ふざけてるわけじゃないです。本心です、ハイ。
私を徐々に黒いオーラが包み込んでいく。
強く歯噛みをする。
このままじゃ危うい。
《霊刀・水蓮》を構えて、私は瞬時に虎鐘さんとの距離を詰める。
虎鐘さんは私をただ見つめていた。
だとしたら勝率はかなり上がる。
“使えたら”の話ではあるけど。
虎鐘さんは瞬間移動のような動きで的確に弾幕を避け続けている。
私はいつもの様にその場一帯の空間を歪めた。
すると虎鐘さんが、空間を逆側に歪め、プラマイゼロにしていく。
それは、ヤバい、兎に角ヤバい、ドン引きだね、うん。
失礼だけど本当に人間ですか?と聞きたくなるくらいである。
虎鐘さんは左眼の色を変えて、そう言った。
殺れって……………そこまでやる?
ヤッパリ、ナンデモナイデス。
私はため息を吐いて、一枚の札を取り出した。
別に手抜きしてる訳じゃないんだけど、周りが規格外過ぎるんだよ、うん。
一瞬でも良い、相手の動きを止められれば何とかなる。
札が解ける様に消える。
リィーシェに教えてもらった技だけど、リィーシェが『絶対に使うな』って言ってたんだよね。
何の為に教えたんだろう?
虎鐘さんは瞬時に私との距離を詰め、思いっきり殴り飛ばしてきた。
私は弾幕を乱射する。
非常に危ないです。
殴り飛ばしては距離を詰め、また殴り飛ばしては距離を詰めるのを繰り返している虎鐘さん。
一度距離を取る為、私は鎖を札を飛ばす。
空中で宙返りしたと同時に大量の刀が私目掛けて飛んで来た。
ちょ、それは危な過ぎるよ!?
私は身体能力強化の術の出力を上げ、瞬時に避ける。
………そういえば虎鐘さん今、『幻想』って言ったよね?
全方位を刀が囲っており、一斉に中心の私へと飛んで来る。
わぁ、本気で殺しに来てる。
でも、こんな所で死ねない!
爆発の勢いを利用して、私はひとっ飛びして避けた。
虎鐘さんが距離を詰め、私の首を掴んで凄まじい力で握り締めた。
ちょっと油断した………!
言ってくれますなぁ…………『この程度の心』だって?
貴方達が規格外過ぎるんですよ………!
…………でも、そこまで言われたからには。
まず何処をどう見たら『最強』に見えるのか教えて欲しいんだけど…………!?
直後、私は虎鐘さんに拳で思いっきり殴り飛ばされる。
防御を取って、私はナイフを回転させながら取り出す。
研いでおいて正解だったね。
虎鐘さんは刀を大量に飛ばしてくる。
いつもの様に刀を弾く。
虎鐘さんは刀を持ち、距離を詰めて斬りかかって来た。
同じく距離を詰める。
次の瞬間、虎鐘さんの刀は既に私に突き刺さっていた。
私はナイフを振るう。
虎鐘さんが私のナイフに触れるとそのナイフが跡形もなく消えた。
その辺守った方が良いのでは?
私は溜息を吐きつつ、思案する。
真正面からは確実にダメ、技巧を凝らしても恐らくほぼダメ。
だとしたら、どうする?
やってる事が神様がやる事なんですけど。
一般人の私がやって良い事じゃ無い気がするよ?
そう言って虎鐘さんは翼を広げた。
そうして私は《グングニル》を取り出す。
何で使えるか?
ナンデナノカ、ワタシモシラナイデス
何なら、それが出来るのは少数のみだと思う。
直後、私の意識が奪われた。
ちょっと私は、色々と規格外過ぎて付いていけないです。
そこからは、少しの間カイ兄vs虎鐘さんの戦いだった。
その戦いは兎に角規格外で、凄かった。
ただ、それでも。
負けたくない。
虎鐘さんと戦って……そして今カイ兄と虎鐘さんの戦いを見て、やっぱり負けられないと思った。
だから。
私はそう呟いて、一度しゃがみ込んだ。
いや、戦いの邪魔をするのは悪いとは思ったけど。
目を閉じ、昔ラズ兄が教えてくれた事をブツブツと呟く。
直後、周囲が瞬く間に眩しく光った。
それでも、私は集中力を途切らせなかった。
これは、私が暗殺者の時にいつも言っていた台詞だった。
そして私は瞬時に虎鐘さんの背後を取った。
光が消えると同時に虎鐘さんと私の位置が入れ替わっていた。
私は虎鐘さんに向け、斬撃と弾幕を発射する。
常人なら反応すら出来ない筈の速度で放たれた私の攻撃は、再び周囲が眩しく光り、全ての弾幕が無かったことになった。
更に一瞬だけ動きが拘束される。
その一瞬の隙をついて、虎鐘さんが何発も拳を叩き込んでくる。
それでも、私はただ淡々と複雑な印を結ぶ。
印を結び終わると、辺り一面に鎖が荒れ狂った。
………今思ったけどこの技も中々“危ない”よね。
虎鐘さんは瞬く間に鎖に縛られる。
それでも私は油断無く構え続けた。
この人がそう簡単に捕まるとは思えないからね。
そもそもその鎖くらいなら、直ぐに壊せるはずだ。
周囲が眩しく光ると鎖がバラバラになっていた。
ですよねー。
それが一番面倒なんですけどね!
再び周囲が眩しく光ると、既に私の身体には何発も拳が叩き込まれている。
私は再び辺り一帯を歪めた。
虎鐘さんは歪みを逆向きに歪ませて相殺する。
規格外ですね、はい。
複雑骨折どころか、場合によっては塵すら残らないと思いますが。
私は走り出す。
虎鐘さんは空から落雷を降らせる。
私は避けながら距離を詰める。
空から赤い落雷が大量に降ってくる。
自然災害どころじゃないじゃん。
だから、大切な家族を死なせた。
大切な親友を死なせてしまった。
兄を死なせてしまう所だった。
全部、自分のせいだ。
自分が弱いから。
虎鐘さんは青白い靄のようなものを出して、私を包み込み、動きを鈍くさせた。
それでも私は身体能力強化だけで避け続けた。
大量のナイフ、空からの落雷、虎鐘さんの拳による連撃が絶え間なく撃ち続けられる。
私は《簡易空間》から薙刀を取り出した。
灰色の薙刀は、久しぶりに使うにはあまりにも鋭利過ぎる気がするが………まぁ、相手が規格外だから良いよね、うん。
その時私はドス黒い殺意に満ちていた。
これ以上色々言われるのは癪だったからね。
私は深呼吸をして、構え直す。
そもそも『チートっぽい』ではなく実際に『チート』だったね、うん。
無理だよ!?
そう簡単にホイホイ出来るものじゃないよね!?
どうすれば良いの!?
空から何発も落雷を落としてくる虎鐘さん。
そう言ってたら光放てたんですが何故ですか。
周りに規格外の人達が多過ぎて困るんだけど!
え、突然どしたの?
私、神様がやる様な事をやってしまった様です。
一般人の私がやって良い事じゃないよね!?
私は目を伏せて、考え始める。
私は溜息を吐きながら、そう言った。
だって本当なんだもん。
やっぱり付いていけないです、はい。
何か………ごめんなさい?
私は髪の毛をがしがしとかく。
女の子はよく髪の毛を気にするらしいんだけど、戦闘してるから既に髪の毛がボサボサです。
そもそも、やり方すら知らなかったんですよ!?
そんな人にそんな事言っても困りますが!?
次の瞬間、私の全方位がナイフで囲まれていた。
私は目を伏せる。
これだったらまだカイ兄と戦った時の方が辛かった気もする。
直後、全てのナイフが同時に飛んできた。
私は“能力を付与した”薙刀を振るい、ナイフを斬る。
ついでに《幻想・ドラマティックナイトメアラジング》を使ってナイフを粉々にする。
その結果、ナイフが全て消失した。
…………やり過ぎた気がする。
ということで斬って、粉々にさせていただきました。
それだけは確実に即答出来る。
久しぶりに吸血鬼の羽を生やして、構える。
人間、土壇場で何が出来るか分からないからね。………私は人間じゃないけど。
分かりやすい説明ありがとうございます。
ここまで来たんだ、負けられないよ。
周囲を眩しい光が包み込み、直後に速度の上がったラッシュが撃ち込まれる。
そんな単語言っちゃいけないんですよ!?
普通の人はそういう事を言いません!
………規格外の人は知りませんが。
私は呼吸を整えて防御しつつ、薙刀を振るった。
止めた瞬間確実にアウトだ。
虎鐘さんは攻撃の手を緩める事なくラッシュを放ち続けてくる。
薙刀を振るいつつ、私はナイフを投擲する。
虎鐘さんが私の顔面を物凄い力で掴んでくる。
痛い痛い痛い!
兎に角痛かったので私は虎鐘さんを珍しく蹴り飛ばした。
予想外の行動に一瞬動きが止まった。
私は一瞬のうちに虎鐘さんの背後に回って、連続的に斬り付けた。
私は虎鐘さんを鎖で捕縛し、《霊刀・水蓮》で彼の体を貫いた。
虎鐘さんは《霊刀・水蓮》を抜いて立ち上がる。
直後、一瞬周囲が光ると先程までの傷が跡形も無くなっており、完全回復する。
私は一度後退する。
あそこまで傷を負わせたのにそれが一瞬にして完全回復はキツいよ!?
虎鐘さんが瞬間移動の如く距離を詰めてくる。
私は再び虎鐘さんの背後に回る。
そうは言っても流石と言うべきか。
虎鐘さんは瞬時に振り返って、ラッシュを叩き込んでくる。
しかし私はそのラッシュを避け、再び何度も斬りつける。
しかし落雷が当たり、ノックバックさせられてしまう。
私は慌てて後退する。
すると、空から先程よりも大量の真紅の落雷が降ってくる。
私は《霊刀・水蓮》を構え直し、身体能力強化をかけ直しつつ落雷を避ける。
私は構えたまま、そう答えた。
虎鐘さんは何かを考えているみたい。
その隙をどうやって“作るか”だよねぇ。
虎鐘さんが大量にナイフを投げてくる。
私は《水封流剣術》を使い、ナイフを全て弾いた。
出来れば、今から少し前に使った技《幻戯・翠時ノ封》の効力が切れる前に終わらせたい。
しかし効力は持って残り5分程。
虎鐘さんが《霊刀・水蓮》を片手で掴む。
素手で!?
虎鐘さんは刀にミシミシと力を込め始める。
この刀はカイ兄から貰った大切な物なのに…………っ!
徐々に《霊刀・水蓮》にヒビが入っていく。
素手で折ろうとしないでもらえます!?
私は強く歯噛みをしながら、何とか抜き取ろうとする。
突然、虎鐘さんが刀から手を離して頭を抱え出した。
私はその間に後退する。
私は無数のナイフを回転させ、放つ。
虎鐘さんはナイフを全て弾いて、私に手を伸ばして飛び掛かってきた。
そこまでして“執着”するものなのかなぁ。
私は虎鐘さんの背後に回り、ダガーを投擲した。
ダガーは虎鐘さんに直撃した。
指でナイフを回転させながら私はそう言った。
虎鐘さんは一度距離を取ろうとする。
直後、辺り一面にナイフが乱舞する。
虎鐘さんは防御体制をとるが、ナイフは何本も刺さっていく。
ナイフを放ち続けながら私はそう呟いた。
しかし虎鐘さんはナイフが刺さりつつも、何やら片手に力を込め始めた。
私は構える。
…………嫌な予感がするけど。
直後、虎鐘さんが渾身の拳を一発放ってくる。
私は今出せる全ての力を込めた一撃を放った。
お互いの拳がぶつかり合い、凄まじい威力の衝撃波が周囲に広がり、空気すら切り裂いていった。
そのまましばらくの時が経つ。
ここまで来て逃げたく無い、負けたく無い!
私の拳から、血が流れてくる。
だって痛いからね!
直後、虎鐘さんの拳から腕にヒビが広がっていく。
私は更に力を込める。
虎鐘さんのヒビが全身まで広がっていき、遂には爆発四散した。
私は溜息を吐いた。
……………正直、死ぬかと思った。
いや、現時点で死にかけなんですけどね?
直後、ドス黒いオーラが私の全身を包み込んだ。
流石にしないよね?
“全てを憎め”ねぇ………。
多分今までやられた事のことを言ってるんだろうけど…………。
今は、“憎い”だなんて、“壊したい”だなんて思えないから。
直後、私の意識は奪われる。
そもそも慣れるものじゃないけど。
突如、上空から高速で槍のようなものが降ってきて私の身体を貫いた。
結構痛かったです、はい。
予想通りの結果って………分かってたんじゃ無いんですか?
コミュニケーションって難しいんですからね!?
霊喜さんが私ごと貫いたまま地面に突き刺さった槍を抜くと、槍の先から私が取り込んだ飴玉のようなものが再び現れた。
そのまま霊喜さんは歩いて行ってしまった。
身体中痛いけど、それどころじゃ無いんだよね………。
すると刃さんが空から飛んで来た。
空から飛んでくるのを見慣れちゃったよね、うん。
え、何故?
うん、近付いたら危ないよね。
私はふらふらとした足取りで立ち上がる。
私はふらふらとした足取りで刃さんに着いていくのだった。
※2023 3/20 18:48 手直し















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。