玄関のドアが閉まった瞬間
力が抜けたみたいに背中を預けた
家の中は静かだった
誰もいない
さっきまで隣に誰かがおった気配が急になくなると
なんか……広い。
ぽつりと呟く、
靴もちゃんと脱がないまま、ぼーっと立ってた
手を見る…さっきまで
そこにあった温度
あなたの手、小さくて、冷たくて
でも途中から、ちゃんとあったかくなって
思い出した瞬間、顔が熱くなる。
リビングに入って
ソファに倒れ込む、顔をクッションに埋めた
声がこもる、心臓がまだ落ち着かない
退院して
会いに行ったら
あんな顔して立っとるとか
反則やろ
泣いとったやん、嬉し泣きやろ?
あれはそういうことやんな?
名前呼んだ時の声
――康二
天井を見る
思い出す
マフラー巻いた時
近すぎた距離
泣き出した顔
強がってるのに
全然隠せてへんとこ
帰り道
手離そうとしたら
普通に握り返してきたこと
笑いが漏れる、嬉しすぎて意味分からん
窓際で本読んどる時も
体育のあとフラフラしとった時も
ずっと気になっとった
笑わん子やと思っとったのに
今日、初めてちゃんと笑った
門の前で、ちょっとだけ口元緩んだやん
胸を押さえる、ドクドクしてる
手術跡の奥が少し疼く…でも苦しくない
むしろあったかい
あの日保健室で倒れて病院連れてってもらってから
正直めちゃくちゃ怖かった
また入院かって…また全部止まるんかって
でも……
保健の先生から聞いた
『あの子、あなたのこと聞きに来てたわよ』って。
何回も来てたって、それだけで頑張れた
絶対会いに行こって思った
……なのに今日
普通に歩いて、普通に喋って、普通に手繋いで
名前呼んでもろて。
「……好きになってまうやろ。」もうなってるけど
一度立ち上がってひとりごとを言いながら
にやけてしまって、またソファに倒れ込む
クッションを抱きしめる
あなたの顔が浮かぶ
『違うし』って真っ赤になっとった顔
『考えとく』ってそっけなく言った声
なのに、最後、振り返った時
ちょっと寂しそうやった
「……あー……。」
天井を見る。ニヤける。止まらん!!
「はよ、会いたいーーー」
学校明日来るかな、来てくれるかな
また名前呼んでくれるかな
……手、また繋げるかな
考えてたら、急に体を起こした
「……あ。」
数秒
固まる
リビングに響く声
ソファの上で頭抱える
天井に向かって叫んだ
するとリビングの扉が開いた音と同時に
『あほって言うんじゃない?あははは』とおかんの声
おかん
『ぜんぶ?ひとりごと大きいから、がんばってね』
と微笑む
恥ずかしい!!
退院初日
最大の失敗だった












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。