おせたちの家は、電車で2駅行ってすぐのところ。いつもならすぐ着くのに、なぜかとても長く感じた。早く着いてと心が叫んでいる。
電車内でも呼吸は乱れたまま。どうにか抑えようとするけどやっぱり駄目だった。脳内がおせで埋め尽くされる。
大好きなおせがいなくなっちゃうんじゃないか。そう、不安になる。
ホームを出ると、淀みなく足が動いた。
本当に自分の身体なのか疑うほど、人ってこんなに早く動けるんだと思うほど。息が上手くできなくて、苦しくなって、止まりたくて。でも、勝手に身体は動いて。
“早くおせのところに行かなきゃ”と自分の身体が叫んでいた。
呼吸は相変わらず乱れたまま。ドアを開けてくれたふみやに、おせのところに行きたい旨をなんとか話した。
何回も通った階段、横には絶対おせが居たのに。
おせの部屋の前でノックをしたと同時にドアを開けた。普段なら“ノックの意味考えて”とかって怒られるけど、そんなの今はどうでもいい。
画材や器具の散らかった部屋で倒れているおせ。机にはペットボトルの水と全て出し切った薬のシート。普段おせは薬は飲まない方だ。頭が痛いとか、そういうこともあまりないような気がする。
だったらこの減り方は、OD以外何物でもない。
__救急車、呼ばなきゃ、おせが…
そういって電話をしだしたふみやの背中が大きく見えた。
同い歳なのに、なんでふみやはこうも大人っぽいのかな。
そう思いながらおせを回復体位にする。
こういうとき、看護師を目指していてよかったと心の底から思う。
ちょっと微笑みながら“馬鹿”と付け足された。まるで“大瀬は大丈夫だから”とでも言っているようだった。
ふみやが横に居てくれる時の謎の安心感は何なんだろう。おせや理解さんやテラさんとはまた違う。
救急車に乗らせてもらい、そして携帯型の酸素ボンベも使わせてもらった。使ってちょっとしたらだいぶ息がしやすくなって、酸素って凄いんだなと改めて思った。
そんなことを思っていると、ふと言葉が聞こえた。
“バイタル崩れてます”
全身が痛くなった。救急車が来てくれたことに安心して、自分の息を整えることしか考えてなかった。
今僕がこうやってしている間におせが大変なことになっちゃったらどうしよう。そう思うと、息がまた乱れていく気がした。
実際にはどうか分からない、目の前が真っ黒に染まったから。
__しんどい、辛い。耐えて……ッ
目の前に色が戻ってきた時、僕は座りながらふみやに膝枕している状況だった。
ふみやが携帯型の酸素ボンベを当ててくれていた。そして、いつも首に巻いているリボンのチョーカーが、何故か右手の中指と薬指に絡まっていた。
その時の僕は、意識はあるものの、声が上手く出せなかった。喉と肺が痛くて仕方がなかった。あまり覚えていないけど、救急車の中でも携帯型の酸素ボンベは見たような気はする。
その後お医者さんから聞いた話によると、原因は薬の過剰摂取による意識障害と呼吸障害とのこと。案の定すぎる原因だけど、本当に焦った。人生でこんなになること無いだろうと思うほど、心臓の音がうるさかった。
リボンに関しては、過呼吸になっていた時に、もしかしたらリボンが悪さして首を絞めてしまうかもしれないリスクがあったからとのこと。扱いには慣れすぎているが故、起きた時の違和感が凄かった。
ふみやに4人ほどの相部屋に案内された。でも、他に入院している人は誰1人居なくて、ぼろぼろの腕に管の繋がれたおせがぽつりと寝ているだけだった。
涙が溢れてくる。もう出し切ったものだと思っていたのに、目が痛くて仕方ないのに、おせが起きた時には笑顔でいたいのに。
また呼吸が乱れそうになる。また肺が痛くなる。
そう言って、ふみやは部屋を後にした。
広く大きな部屋には、おせと僕の2人だけ。
動いているものは、時計の秒針、点滴剤、そして、呼吸。それだけ。
嫌らしいほど音が強調されて、頭の中でぐちゃぐちゃになる。
おせの手を握り、呟く。
小さい頃から怖がりな性格の僕にいつも言ってくれた言葉。
2人の中の合言葉のようなもの。
__だから、だから。きっと大丈夫だよね、おせは。らんらんは信じてるよ
前回のは描き溜めていたやつなので描き方がだぁいぶ変わってることが目に見えたね(
空白は変わらず入れてるんだけど文字間に入れなくなったというかなんというか。
こっちのが見やすいかなーって思って変えました。前回までの描き方のが良かったら戻しますアンケート
描き方戻す?
戻して欲しい
0%
どっちでもいいよ
88%
戻さなくていい
13%
投票数: 8票













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。