昼過ぎ
基地の中は、穏やかな空気に包まれていた
軽い雑談
整備の音
いつもの日常
――その瞬間
ビーッ
ビーッ
ビーッ
耳をつんざく警報音
赤いランプが、天井で激しく点滅する
一瞬で空気が変わった
張り詰める
らっだぁが椅子を蹴るように立ち上がる
オペレーターが慌てた声で答える
一瞬、言葉が詰まる
その一言で全員の目が変わる
金豚きょーがゆっくり首を回す
ゴキ、と音が鳴る
みどりは静かに立ち上がる
無駄な言葉はない
レウクラウドはすぐにバッグを手に取る
回復薬、補助道具――確認
コンタミも遅れて立ち上がる
静かに
だが確実に
らっだぁが笑う
森に入った瞬間
空気が変わった
重い
湿っている
音が吸い込まれるような静けさ
らっだぁが呟く
金豚きょーも眉をひそめる
みどりが前へ出る
そのまま、姿が消える
完全に気配も消えた
残された4人は、無言で待つ
数分
やけに長く感じる時間
やがて――
スッ
みどりが戻ってくる
表情はいつも通り
だが、ほんの少しだけ影があった
らっだぁがニヤッと笑う
金豚きょーが低く言う
コンタミは視線を横へ向ける
――水の気配。
すぐ近くに川
流れは深く、量もある
それだけを考える
ズシン
ズシン
森の奥から“それ”が現れる
黒い外皮
鋭く湾曲した爪
筋肉の塊のような体
人の背丈を遥かに超える巨体
四体
目は――赤
異様な光を宿している
レウクラウドが息を呑む
らっだぁが前へ出る
地面を蹴る
らっだぁの姿が一瞬で消える
――鬼化
身体能力が跳ね上がる
一体目に肉薄
拳を振り抜く
ドゴォッ!!
空気が爆ぜる
モンスターの体が吹き飛び、木々をなぎ倒す
金豚きょーは空へ
黒い翼が広がる
影が地面を覆う
闇が凝縮する
刃となる
振り下ろす
二体目へ直撃
ズバァン!!
黒い斬撃が体を裂く
みどりは――いない
次の瞬間
三体目の背後
短剣が閃く
急所へ正確に突き刺さる
静かに、確実に
レウクラウドは後方
全員の動きを見ている
誰が次に被弾するか
一瞬で判断
完全なサポート
連携は完璧だった
――普通なら
最後の一体
一番大きい
一番“濃い”
そいつが、ゆっくりと動いた
標的は――
コンタミ
ドンッ
地面が沈む
巨体が突進
巨大な腕を振り上げる
圧倒的な質量
避ければ済む
普通なら
だが――
コンタミは動かなかった
静かに、手を前へ出す
次の瞬間
世界が変わる
ゴォォォォッ!!
川が、唸る
水が意思を持ったように動く
大量の水が空へと巻き上がる
それは形を変える
――触手。
巨大な水の腕
一本
二本
三本
四本
一気にモンスターへ襲いかかる
巻き付く
ギシギシギシ……
骨が軋む音
圧力
逃げ場はない
モンスターが暴れる
だが、水は逃さない
締める
さらに締める
コンタミの指が、わずかに動く
それに呼応して
水が強まる
静かな声
次の瞬間
ドォォォン!!!
叩きつける
地面が陥没する
森全体が揺れる
衝撃波
土煙
――沈黙
モンスターは動かない
完全に、終わっていた
静寂が戻る
らっだぁが息を吐く
金豚きょーが苦笑する
みどりも小さく
レウクラウドはホッとした表情
――しかし
コンタミだけが違った
彼は動かない
ただ、倒れたモンスターを見ている
水の触手
圧倒的な拘束力
逃げ場のない力
簡単に
あまりにも簡単に
敵を“壊した”
ふと、頭に浮かぶ
もし――
この力が暴走したら?
もし――
仲間に向いたら?
想像した瞬間
胸が重くなる
わずかな恐怖
わずかな不安
コンタミはゆっくりと手を下ろす
水は崩れ、川へと戻る
何もなかったかのように
森は静かになる
だが
彼の心だけが――
少し、沈んでいた
ストレス値
らっだぁ:32
みどり:30
金豚きょー:36
レウクラウド:40
コンタミ:52












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!