ゆさり、ゆさり……
歩く音と布が擦れる音が聞こえる
……僕はちゃんとビルから飛び降りた筈だ
なのに音が聞こえる、ということは……
薄らと目が開いた
もう沈む太陽がまだ光を発していて眩しい
そしてその光を反射して銀色の何かが眩しい
眩しさを堪えて目の前の状況を観察する
僕の眼前に広がるのはまず銀色の髪だった
その他には背広な黒い布に銀色の髪の隙間から
少し緑色の布が見え隠れしていた
どうやら僕は誰かにおぶられていると考えるのが妥当だろう
まぁその誰かは少しどうでも良い
今の重大な問題は……
「また自殺に失敗した」
という問題だ
これ程までに自殺とは難しいものなのか
矢張り、自殺未遂に失敗する方が……
と考えていると僕をおぶっている人が歩みを止めた
その人は首を少し横に捻り此方の様子を伺ってきた
そう云うとその人は黙り込む
すると暫くして声を発する
その人は即答した
この街は魔都と呼ばれるヨコハマ
そんな街の平和だなんて何年かけたって叶うものなのだろうか
人の心は常に新しいものと塗り替えられる
純粋な白い心は特に簡単にどんな色にでも塗り替えられる
誰かに塗り替えられた時、元々あった色には戻れないだろうに
この人は塗り替えられてもその色は残るというのか
何故そう思うのだろう
僕は少し頭を捻る
少しその人は無言になった後、云った
そんな一言に僕は内心少し驚く
その何気ない一言は嘘偽りない様に聞こえる
僕はその人の背から降りて云う
僕は福沢と名乗る人と握手を交わした
𝐍𝐞𝐱𝐭 𝐒𝐭𝐨𝐫𝐲 ⬇












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!