席の目の前に戻るなり、私はその場にしゃがみこむ。
び…びっくりした…いや、ちょっと怖かった…
その声にハッとして顔を上げる。
私のただらなぬ様子に、二人が心配そうに尋ねてきた。
心臓がドクドクと素早く脈打って、上手く話せない。
すると後ろから「あなたの名字。」と名前を呼ばれた。
振り返ると柊さんが戻って来ていた。
謝りながら慌てて立ち上がる。
心配ばかりかけて申し訳ない…
けれど実際、パニックになってしまったのも事実で。
大人しく席に座って深呼吸をすると、柊さんは距離を取ったまま地面に膝を着き、私と目線を合わせてくれた。
すかさず返された答えに「えっ。」と声が漏れた。
そう言うなり立ち去ろうとする柊さんに、慌てて「待ってください…!」と声をかけた。
存外、大きな声が出て、柊さんだけでなく、私自身も驚く。
…いや、今はどうでもよくて。
カバンを引き寄せ、ギュッと抱え込む。
カバンを手に立ち上がり、柊さんとの距離を詰めて柊さんを見上げた。
柊さんは何とも言えない、様々な感情が滲む瞳で私を見つめていたかと思うと、ふと口に弧を描いた。
私は力いっぱい頷いた。
柊さんの怪我は獅子頭連の彼と比べて大分軽く、その分軽い手当てで終わった。
柊さんは優しい笑みを浮かべて、自分の席へ戻って行った。
柊さんを見送ると、少し息を着く。
依然として膠着状態の舞台を見上げる。
出来ることは、桜君の無事と勝利を信じることだけ。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!