第39話

38話
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2025/09/06 22:00 更新
席の目の前に戻るなり、私はその場にしゃがみこむ。














び…びっくりした…いや、ちょっと怖かった…











蘇枋 隼飛
大丈夫?
楡井 秋彦
な、何かあったんっすか…!?












その声にハッとして顔を上げる。














私のただらなぬ様子に、二人が心配そうに尋ねてきた。











あなた
え…っと、手当てしてたら、獅子頭連の人、起きちゃって、
あなた
いきなりだったから、その、驚いて、えっと、












心臓がドクドクと素早く脈打って、上手く話せない。














すると後ろから「あなたの名字。」と名前を呼ばれた。














振り返ると柊さんが戻って来ていた。











柊 登馬
アイツが驚かせて悪かった
柊 登馬
大丈夫か?
あなた
は、はい
あなた
すみません、いきなり逃げ出して…












謝りながら慌てて立ち上がる。











柊 登馬
いや、大丈夫だ
柊 登馬
それと無理やり立たなくていい
柊 登馬
席に座んな
あなた
す、すみません…












心配ばかりかけて申し訳ない…














けれど実際、パニックになってしまったのも事実で。














大人しく席に座って深呼吸をすると、柊さんは距離を取ったまま地面に膝を着き、私と目線を合わせてくれた。











柊 登馬
アイツには俺から説明したから心配すんな
柊 登馬
手当てしてくれて、ありがとな
あなた
いえ、お礼なんて…
あなた
それに、まだ柊さんの手当ても出来てないですから
柊 登馬
いや、俺はいい













すかさず返された答えに「えっ。」と声が漏れた。











柊 登馬
驚かせたばっかで、男に近寄れってのは酷だろ
あなた
……
柊 登馬
俺の怪我はそんな酷くねぇし、心配しなくていい












そう言うなり立ち去ろうとする柊さんに、慌てて「待ってください…!」と声をかけた。














存外、大きな声が出て、柊さんだけでなく、私自身も驚く。














…いや、今はどうでもよくて。











あなた
ここに連れて来てもらった意味が無くなります
柊 登馬
けどな…
あなた
…心配してくださって、ありがとうございます
あなた
でも、その…まだまだ短い付き合いですけど
あなた
ここまで優しい人達は、なかなかいないなって分かるんです
あなた
その優しい人達に私は助けてもらって、心配してもらって、申し訳ない反面、
あなた
すごく嬉しいんです












カバンを引き寄せ、ギュッと抱え込む。











あなた
…世の中、怖い男の人だけじゃない
あなた
桜君みたいに、優しい男の人がたくさんいるはず
あなた
そんな人達とたくさん話して、知って、仲良くなりたい
あなた
ならそうなれるよう、私はその努力をしないと












カバンを手に立ち上がり、柊さんとの距離を詰めて柊さんを見上げた。











あなた
手当てさせてください
柊 登馬
……












柊さんは何とも言えない、様々な感情が滲む瞳で私を見つめていたかと思うと、ふと口に弧を描いた。










柊 登馬
そこまで言われちゃーな…
柊 登馬
頼んでいいか?












私は力いっぱい頷いた。











あなた
もちろんです

























柊さんの怪我は獅子頭連の彼と比べて大分軽く、その分軽い手当てで終わった。











柊 登馬
サンキューな













柊さんは優しい笑みを浮かべて、自分の席へ戻って行った。














柊さんを見送ると、少し息を着く。











あなた
(他に出来ることは…)












依然として膠着状態の舞台を見上げる。














出来ることは、桜君の無事と勝利を信じることだけ。











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