PM4時 Flylark事務所
何で碧衣はそんなことも分からないんだろうか……
あっ、バカだから?←違うよ
逆にそれ以外に理由があるとでも?
PM8時 警察署
一声掛けてから事情聴取されている男性が居るという部屋に入る。
…私の能力は「集中」。
脳内の情報整理を早いスピードで行うことができる。
依頼をしている最中は基本能力使いっぱなしにしてるけど、私の能力はそこまで利点の大きいものではないから、割と代償は少ない。
……この間三日連続で使った時は流石にきつかったけど……
モブが喘ぎながら息絶え絶えに私に抗議してくる。
……何を勘違いしているんだろうか、こいつは。
なるほど……さっきからやけに潔が良いと思ったけど、こいつとしては会社を壊せればそれで良いってわけか。
いや、それより……
夜の空気に階段を踏み付ける音が響く。
冷たい空気が頬を撫でるのを感じながら私達は非常用階段を駆け上がっていた。
優友がそう言ってドアをぶち破る。
中に居たのはガラの悪い四十代後半位の男。
腕のあちこちに入れ墨が入っており、見たものを圧倒する様な威圧感があった。
しかし私の目はその男ではなく、そいつの後ろで縮みこまって座っている小さな女の子に引き付けられた。
「人質」
その言葉が頭に浮かぶ。
碧衣が実行犯の男に向かって叫ぶ。
……ひとまずあの子を彼奴から引き離すのが最優先だね。
ぎょっと目を剥く二人を横目に私は其奴に話しかける続ける。
ふうっ、と胸を撫で下ろす。これでひとまずあの子は安全な筈だ。
……まぁ、反対するよな〜
私とその子が入れ替わる。
こちらを心配するような眼差しで私のことを見てくる。私はその子に向かってニコッと微笑んだ。
くるりと振り返ってこめかみに向かってつま先を向けて横へ蹴る。
ぶっ倒れた男を見下しながら言う。
乾いた音が廃ビルの中に響く。
私は碧衣に叩かれた頬を押さえながら呆然とした。
え?叩いた?今碧衣私の事叩いた?泣くよ?
ギュッ
二人が何故か揃って私に抱き着いて来た。
な、何で泣いてんの!?怖い怖いやばいどうしよう!?
不思議に思って尋ねると優友が私の肩に顔を埋めたままぼそぼそと言う。
……何で二人共こんなキレてんの???←お前のせいだよ
その後、事務所で正座2時間耐久させられました。
足痛い……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。