第2話

理不尽
33
2026/08/25 00:00 更新
イゾレ
イゾレ
いやいやいや!……突然そんなこと言われたって無理ですよ!!



イゾレは慌てて首を振った。


イゾレ
イゾレ
というかなんで自分なんですか……?
マリス
マリス
そりゃアタシが昨日の件を隊長に
話したからに決まってんじゃーん!



満面の笑みでマリスが胸を張る。
マリス
マリス
あっ、そっか。
イゾレちゃんと隊長って初対面なんだっけ?



そう言うと、
マリスは部屋の奥に座る人物へ両手を向けた。


マリス
マリス
この方が!!
マリス
マリス
我ら魔禍討伐部隊の隊長である“ラテト”隊長でーす!!



静かな部屋に少しだけ沈黙が流れた。



大きな机の向こう側。



ラテトと呼ばれる人物がゆっくりと口を開いた。
ラテト隊長
ラテト隊長
……紹介に預かったラテトだ。
突然呼び出してすまなかったな、イゾレ。
イゾレ
イゾレ
いやぁ……別にいいんですが……。



イゾレは苦笑いを浮かべる。


イゾレ
イゾレ
どうして自分なんですか…?
ラテト隊長
ラテト隊長
戦力のためだ。
イゾレ
イゾレ
……ですよねぇ。



昨日の出来事を思い出す。


5人がかりでやっと倒せるような魔禍を
自分は一撃で倒してしまったのだから。


正直、イゾレ自身も理由は分かっていない。
ラテト隊長
ラテト隊長
あの魔禍を1人で倒せる実力のあるヤツが
一般暮らしだったらもったいないからな。色んな意味で。
イゾレ
イゾレ
いやでも自分、魔禍の知識とか全く知らないんですよ!
イゾレ
イゾレ
だからその……討伐とか絶対向いてないんですよ〜。



下手な言い訳で入隊を逃れようとするイゾレ。


マリス
マリス
そこはアタシが説明しましょー!



そこにマリスは勢いよく前に出た。


マリス
マリス
まず!魔禍っていうのはね!
イゾレ
イゾレ
うん。
マリス
マリス
強くて……凶暴で……でも興味深いらしくて……。
イゾレ
イゾレ
…うん。
マリス
マリス
とにかくドバババーっと厄介で魔禍って感じの生き物!
イゾレ
イゾレ
うん……。



ラテトはため息をつき、頭を抱えた。


ラテト隊長
ラテト隊長
……仕方ない。私から説明しよう。
イゾレ
イゾレ
お願いします。
ラテト隊長
ラテト隊長
まず魔禍は大きく分けて3種類いる。
ラテト隊長
ラテト隊長
1つ目が凶暴魔禍。
私達(魔禍討伐部隊)が主に相手にしている個体だ。



ラテト隊長
ラテト隊長
2つ目が無害魔禍。
イゾレ
イゾレ
無害魔禍?
ラテト隊長
ラテト隊長
そうだ。争い事を好まない平和主義な魔禍だな。
街(アルカリア)で暮らしている者もいる。



ラテト隊長
ラテト隊長
そして3つ目が幻魔禍だ。
マリス
マリス
まぼろし……?




マリスが首を傾げる。



ラテト隊長
ラテト隊長
目撃情報が極端に少ない魔禍だ。

そもそも本当に存在するのかも怪しい。
イゾレ
イゾレ
へぇ〜……。
ラテト隊長
ラテト隊長
まぁ、都市伝説みたいなものだ。
頭の片隅にでも入れておけ。





ラテト隊長
ラテト隊長
……この説明で理解できたか?
イゾレ
イゾレ
はい……まあ……?
ラテト隊長
ラテト隊長
……すまんな。昔から説明は苦手なんだ。



するとイゾレは慌てて手を振りフォローした。



イゾレ
イゾレ
いえいえ!!十分伝わりました!
ラテト隊長
ラテト隊長
ならいいんだが……。



その時。


マリス
マリス
ねぇ!!



マリスが勢いよく声をあげた。



マリス
マリス
入る入らないは別として、本部のこと知っといた方がいいよね!!
マリス
マリス
アタシが案内するからさ!
イゾレ
イゾレ
えっ!?ちょっ、待っ───
 





イゾレの言葉を最後まで聞かず、
マリスはその腕を掴んでそのまま部屋を飛び出して行った。



ラテト隊長
ラテト隊長
……ちゃんと戻ってこいよ〜。



そこにはラテトの小さな声だけが部屋に残った。



ー  魔禍討伐部隊本部   1階  ー





本部のロビーは思っていたより広かった。



ロビーに居た隊員達は忙しそうにする者や、ダラダラする者。
そして受付では何人もの磨我が書類を抱えている。
壁には討伐記録や地図など貼られており、
どこか緊張感のある空気が漂っていた。





マリス
マリス
えっとね〜!ここがロビー!!



マリスが元気いっぱいに説明を始めた。



マリス
マリス
あっちにドリンクバー、そっちが休憩スペース!
右端にエレベーターと左に2階への階段!
イゾレ
イゾレ
覚えられるかな……。
マリス
マリス
大丈夫大丈夫!!



そう会話をしていると、
休憩スペースの端っこにある
ソファーで寝転がっている者を発見した。



イゾレ
イゾレ
寝てる人がいるね。
マリス
マリス
ああいう人多いよ!
イゾレ
イゾレ
なんで?
マリス
マリス
ここ、年中無休労働みたいなもんだからさ。
イゾレ
イゾレ
ブラックじゃん……。
マリス
マリス
そりゃ昨日だってアタシ休暇だったのに討伐行ったっしょ?
イゾレ
イゾレ
あー……。



言われてみれば、確かにそうだった。

思っていたより、ここは過酷な職場なのかもしれない。



ー 魔禍討伐部隊本部 2階 ー







階段を上ると、長い廊下が続いていた。

両端にはずらりと部屋の扉が並んでいる。



マリス
マリス
ここは隊員寮!!
イゾレ
イゾレ
寮なんだ。
マリス
マリス
そう!
アタシもここ暮らし!!
204号室でシェアハウスしてるんだ〜。
イゾレ
イゾレ
なんだか楽しそう。
マリス
マリス
まあね〜!
この前なんか討伐帰りで
深夜だっていうのにみんなで枕投げしててさ〜

窓ガラス何枚か割れて怒られちゃった〜
イゾレ
イゾレ
しれっと言ってるけどヤバくない!?

ー 魔禍討伐部隊本部 3階 ー







3階は1階や2階より静かだった。

足音がよく響く。

廊下には人影もほとんどなく、少し不気味な雰囲気だ。



マリス
マリス
ここは会議とかミーティングとかやる場所!



マリスが説明する。


マリス
マリス
あとラテト隊長がいた部屋もあるよ!!!
イゾレ
イゾレ
へぇ〜…。
マリス
マリス
でも立ち入り禁止の部屋が多いんだよね。





確かに見渡してみると、
開かずの扉のような部屋がいくつも並んでいた。

その中には黄色いテープでぐるぐるになった扉もあった。



イゾレ
イゾレ
だから人が少ないのか。
マリス
マリス
そゆこと!



マリス
マリス
ただいま戻りましたー!!


バンッと勢いよく扉が開く。


ラテトは書類に書いていた手を止め顔を上げた。



ラテト隊長
ラテト隊長
早かったな。2時間も経たずに戻ってくるだなんて。
マリス
マリス
ふっふっふっ……
最近は短縮というものを学習したので……☆
ラテト隊長
ラテト隊長
学習するとこそこじゃないと思うぞ。



イゾレは小さく頷いた。


ラテトはそんな2人を見てから言う。



ラテト隊長
ラテト隊長
で、イゾレ。
入るかどうか決めたか?
イゾレ
イゾレ
いや……まだ……
ラテト隊長
ラテト隊長
まあ、お前の返事を聞くまもなく
何故か勝手に上で書類が通されてしまっているがな。

だから既にイゾレは入隊している。
イゾレ
イゾレ
嘘ぉ……。



イゾレは頭を抱えた。


理不尽だった。


とても理不尽だった。


ラテト隊長
ラテト隊長
……同情はする。
ラテト隊長
ラテト隊長
私も同じ目にあったからな。
イゾレ
イゾレ
そうなんですか…
ラテト隊長
ラテト隊長
通ってしまったものは仕方ない。頑張れ。
イゾレ
イゾレ
はい…………




ラテトは窓の外を見た。



ラテト隊長
ラテト隊長
……そう気を落とすな。アルカリアを散歩に行こうじゃないか。
マリス
マリス
散歩ですか!?
行く行くー!!



マリスが楽しそうに手を上げた。



ラテト隊長
ラテト隊長
お前には言ってない。

ー アルカリア ー







外に出ると賑やかな声が聞こえてきた。


石畳の道を磨我達が歩き回り、商店街では客引きの声が飛び交う。


焼きたてのパンのいい香りまで漂ってきた。



ラテト隊長
ラテト隊長
………アルカリアはいつも賑やかだな。
イゾレ
イゾレ
ですね。
ラテト隊長
ラテト隊長
イゾレ、あそこのパン屋好きなんだってな。
イゾレ
イゾレ
は、はい!!……なんで知ってるんですか!?
ラテト隊長
ラテト隊長
マリスから聞かされた。
マリス
マリス
なんですかその無理やり聞かされてる感じ!!
ラテト隊長
ラテト隊長
マリスはいつも君の話ばかりするからな。
マリス
マリス
隊長ー!!
ラテト隊長
ラテト隊長
すまんすまん。



ラテトは少し笑った。



ラテト隊長
ラテト隊長
私もあのパン屋、好きなんだよ。
イゾレ
イゾレ
そうなんですか?
ラテト隊長
ラテト隊長
ああ、幼少期から食べている。
イゾレ
イゾレ
そんな昔から!?
ラテト隊長
ラテト隊長
今も昔も変わらない味だ。




その時だった。








\\\ ドゴォォォォオン!! ///



大きな音が街へ響く。



マリス
マリス
わっ!魔禍!




遠くで建物の影から魔禍が現れた。
周囲の磨我達が慌てて逃げ始める。



ラテトは落ち着いた様子で言った。


ラテト隊長
ラテト隊長
丁度いい。イゾレ、行ってこい。
イゾレ
イゾレ
えぇ!?
でも自分武器なんて持ってな……



ひょい



ラテトはイゾレに向けて何かを投げる。


イゾレ
イゾレ
わっ……!!



イゾレは慌ててそれを受け取った。
イゾレ
イゾレ
コレって……。
ラテト隊長
ラテト隊長
拳銃だ。
イゾレ
イゾレ
銃!?
ラテト隊長
ラテト隊長
手持ちので悪いが使ってくれ。弾は入っている。



イゾレは拳銃を見つめる。


そして小さく頷いた。



イゾレ
イゾレ
……ありがとうございます!



そのままイゾレは駆け出していった。

ラテトはその背中を見送った。


マリス
マリス
……いいんですか?隊長。



マリスが尋ねる。


マリス
マリス
イゾレ、銃なんて使ったことないですよ?
ラテト隊長
ラテト隊長
……昨日の件を少し見ていたからな。



ラテトは腕を組む。



ラテト隊長
ラテト隊長
剣より銃の方が向いている気がしたんだ。
マリス
マリス
なるほどー!!
ラテト隊長、目いいですもんねー!!



そして。

1分も経たないうちに……


イゾレ
イゾレ
初討伐、終わりました!!



と、キラキラとした目のイゾレが戻ってきた。



マリス
マリス
はっや
ラテト隊長
ラテト隊長
はっや



2人の声が揃った。



マリス
マリス
何イゾレRTAでもやってんの!?
イゾレ
イゾレ
あーるてぃーえー……?
ラテト隊長
ラテト隊長
予想以上だな。



ラテトは呆れたように笑った。



ラテト隊長
ラテト隊長
1分も経ってないぞ。
イゾレ
イゾレ
そ……そうですか……?
ま、まあ!運ですよ!運!
運が良くって早めに倒せたってだけで……
マリス
マリス
嘘つけ!!!





こうしてイゾレの初任務はあっという間に終わったのであった。








あとがきです。

私思ったんですけど、テンポ感が小説というよりアニメや漫画と同じな気が……

そんなことはともかく
マリスちゃんの文章書く時凄い楽しいです。
ビックリマーク沢山打てるので。

そして差分含めラテト隊長可愛いですよね。

ね?(圧)



それでは閲覧いただきありがとうございました。

おまけの立ち絵。
友人が色々モチーフを考えてくれました。

立ち絵が小説のアイコン描こう!となった
直後くらいに描いたのでバランスが今描いた時よりいい気がする。

(良いよね……前髪……)

プリ小説オーディオドラマ