第3話

✈️
1,064
2020/08/22 15:38
私は読書が大好き。
登下校の電車の中や、家でも寝る前などよく読書をする。


今までずっと恋愛は本の世界だけでいいと思っていた私だけど

最近気になる人ができた。
毎朝私より先に電車に乗っていて、私より2駅先に降りる人。

制服を見るにこの辺りでは有名な高校の人だ。

背が高くて切れ長の目。
その人も私と同じでいつも本を読んでいる。

でもすぐに感情移入する私とは違って、その人は表情が少しも変わらない。

真顔しか見たことがなかった。






でも、1ヶ月前。

その日の帰りの電車でも本を読んでいた。
家の最寄り駅に着き、電車を降りて歩き出した時。
「あの!」

後ろから声がした。

振り返って見ると彼だった。

碧海「これ落としましたよ」

彼は私が落としたらしい栞をくれた。

あなた「あ、ありがとうございます!」
その瞬間私と彼が乗っていた電車が動き出した。
碧海「あっ…」

あなた「わーすみません!」

碧海「いいですよ。次に乗るので」

彼はそう言って笑った。
その笑顔にやられてしまった。






それから1ヶ月経ったが何も変化はない。

元々人と話すのがあまり得意ではない私が彼に話しかけられるはずもなく

彼もまた話しかけてくる気配はない。
やっぱり自分から話すべきか…


家に帰って、明日帰りに会ったら話しかけようと決心した。








次の日の帰り。
学校を出て駅まで歩き、電車に乗る。
彼が乗ってくるのは2つ後。

乗ってきたら絶対に話しかけるんだ。

2駅進んだ。

深呼吸をする。



乗ってきた!!



でも…


彼の隣には背の小さなかわいい女の子。
彼はすごく笑っている。

照れたようにその子を見つめる。

彼女いたんだ…


私の初恋は呆気なく散った。







それから1ヶ月。

週に1度か2度彼は彼女といた。
でもその週は1度も彼女といる姿を見なかった。

金曜日、いつも通り電車に乗ってきた彼が気になってチラッと見ると

読書をせずにぼーっと遠くの方を見つめていた。
なんか…

泣きそう?

気になって仕方なくて

自分の降りる駅を通り過ぎた。
しばらくしてある駅で彼が電車を降りた。
私はそれを追いかける。

あなた「あの、!」

彼の鞄を掴んで声をかけた。
碧海「えっ?」

あなた「あ、えっと…」
やばい。

話しかけたはいいがノープランだった。
碧海「あ、もしかして栞の人ですか?」

あなた「そ、そうです!」

そんな覚え方していたのか。

そりゃそうか。

それしか接点なかったもんな。
碧海「えっと…何か?」

あなた「あ…や、ちょっとお話、した…くて…」

碧海「え」

あなた「あ、急にすみません…やっぱりなんでも…」


碧海「いいですよ」

あなた「え?」

碧海「話しましょう」


駅のホームのベンチに座る。

なんとも言えない距離感。
碧海「俺金城碧海って言います。○○高校の1年です」

あなた「え、1年生!?」

碧海「はい」

あなた「同い年…」

碧海「え、そうなんですか。お名前は?」

あなた「榎本あなたです。××高校です」
会話終了。
何話そう…

気になることは色々あるけど…
碧海「あの、何で急に話そうとか言ってくれたんですか?」

あなた「あ…」
こういう時はきっと当たって砕けろとかいうやつだと思う。
あなた「あなたが、その…気になってて…」

碧海「えっ…」
恋愛初心者の私。

当たって砕けろとかいうより当たりすぎて自分から砕けに行っている。

最初からこんなこと言っていいの?
碧海「…それマジですか?」

あなた「…はい」

碧海「俺実はつい最近彼女に振られたばっかで」
なるほど。

さっきの感じはそういう事だったのか。


…ていうかこれ遠回しに振られてる?
あなた「き、急に困りますよね…こんなこと…」

碧海「まあ、すぐには気持ち整理できないですけど」

あなた「ですよね…」


碧海「でも、なんかあなたとは仲良くなりたいです」


あなた「へ?」

碧海「またお話できますか?」

あなた「も、もちろんです!!」

碧海「よかった笑」

金城碧海くん。

まだチャンスはあるってことでいいですか?

碧海「そういえば駅違いますよね?」

あなた「あー…はい…」

碧海「俺と話すために?」

あなた「…はい」

碧海「嬉しい」
笑った。

あのちょっとかわいい笑顔で。



終わったはずの初恋が再び動き出した。




プリ小説オーディオドラマ