夜の街に、彼の姿を探して歩くのが、
もうすっかり私の日課になっていた。
制服の上から羽織ったパーカーのポケットに
手を突っ込んで、ビルの合間を抜ける風を受けながら。
冷たさよりも、胸の高鳴りの方がずっと強い。
彼は毎日この時間帯、
決まってこの辺りをパトロールしている。
ヒーローとして、街の安全を守るために。
でも私にとっては、それだけじゃない。
今日も無事に彼に会えるかどうか、
それだけで一日の終わりが変わるのだ。
電柱の影からふと顔を上げた瞬間、
ビルの上から軽やかに飛び降りるシルエットが見えた。
服の裾が大きく翻り、月明かりにその輪郭が浮かぶ。
いつ見ても、胸がぎゅっと締めつけられるほど格好いい。
思わず手を振って彼の名前を叫ぶと、すぐ気づいてくれた。
軽くマスクをずらして、彼は笑う。
整った顔立ちに優しい笑み。
その瞬間だけで、私は一日分の幸せを手に入れられる。
冗談めかして笑う声が、夜風よりも心地いい。
でも、その言葉の 友達に会うくらいの気軽さ が、
胸の奥をちくりと刺す。
私はただの、彼と仲のいい知り合い。
毎晩話す相手で、時には相談に乗る友達。
それ以上の存在じゃない。
本当は、そんなのじゃ足りないのに。
ぽつりと、冗談めかして言った言葉。
けれど彼は、にこっと笑って頭を撫でてくる。
違う。
その言葉は違う。
私が欲しいのは、友達としての優しさじゃない。
胸の奥で叫びながらも、声に出すことはできなかった。
だってもし、今の関係すら壊れてしまったら……
毎日会えなくなるかもしれない。
臆病な私は、ただ 友達 のまま立ち尽くすしかない。
ふいに彼が真顔になって、私を見下ろす。
心臓が跳ねる。
今、何か特別なことを言ってくれるんじゃないか
そんな淡い期待がよぎってしまう。
少しでも、期待してしまう。
ほんとは , 一緒に歩きたい。
肩を並べて楽しい話をいっぱいしたい。
もっと貴方のことが知りたい。
なのに、また言えなかった。
彼はヒーローで、私はただの女の子。
その距離は近いようで遠い。
毎日会えても、心の距離は縮まらない。
私の気持ちに、どうして気づいてくれないの。
いや、もしかしたら…気づいていて、
わざと気づかないふりをしてるのかもしれない。
彼にとっては、私は守るべき一般人でしかない。
ヒーローと一般人が恋をするなんて、きっとありえない話。
気づいてほしい。
ただの友達じゃなくて、貴方は特別な人だって。
この想いが、きっといつか届きますように。
To be continued












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。