待ち合わせの時間。
____ここは、白鳥沢近くの公園。
『ふぅ………』
久しぶりだから、、会うのも話すのも緊張する。
ザッ__。
砂利を踏む音が聞こえ、
顔を上げると
そこには、〝あの頃〟と何も変わらない若利がいた。
『っ…久しぶり……』
若利「ああ……久しぶりだな、あなた。」
部活終わりで、白鳥沢のジャージを着ている。
彼の声は落ち着いていて、私だけが緊張しているようだ。
若利「…そこのベンチに座らないか?
話があるんだろう?」
『う、うん、そうだね、座ろう。』
2人でベンチに腰掛け、暫く沈黙が流れる。
『っあ……あのね、、わかと…あっ、、牛島先輩…』
もう彼女ではないのだから、、彼に直接呼び捨てなんて…
しちゃいけないよね、
若利「若利でいい。…ゆっくりでいいから、
話してくれ。」
『…うん、ありがとう。
まず……私が……若利に別れを告げた理由を話たいの、』
それから__暫く何も言わずに私の話を聞いてくれた。
私の家の事、父さんの事も含めて、全部。
『ごめんなさいなんて……偉そうな事は言えない、。
ただ……言いたかったの、何も言わずに去ってしまったから…』
彼の顔を見ることが出来ない。
私は____泣いてしまっているから。
なんで私が泣いてるんだ。
『っ………』
辛い思いをしたのは………彼なのに。
若利「………あなた___泣くな。」
『_ごめん、、私が泣くのはおかしい…よね、、』
若利「いや、お前には笑っていて欲しい。
…俺はお前に似合う男になりたかった。
お前はつねに完璧だと思っていた。
……でも、、影で沢山努力をしていたんだな、、」
ポンッ__
『_!若利…違うよ私…私全然だめで、、っ…
私があの時ちゃんと…ッ__』
ギュッ。
『え……』
ゆっくりと抱きしめられ、
じんわりと彼の温もりを感じる。
若利「すまない……ただもう泣くな。
笑え。___俺はお前が無理をしているのを知っていた。
それをあの時言おうとしたんだ。
でも……遅かった。
もっと俺が早くからお前の心に寄り添ってやるべきだった。」
『っ…うっ……』
若利「………もう、、〝戻れない〟のは__分かっている。
最後に1つだけ言わせてくれないか。」
『なに……?』
ゆっくりと離し、真っ直ぐな瞳で私を見つめる。
若利「…………俺は、今でもお前が好きだ。」
『_____…ありがとう。』
息が詰まる感覚がした。
そして驚いた。
……彼はとっくに新しい人を見つけているとおもったから。
ただ、、私は〝私も〟という言葉を発することはもう出来なかった。
……何故なのかは分かっていた。
好きだという言葉を聞いた瞬間、〝彼〟の顔が浮かんだから。
若利「会えて良かった。
……ありがとうな。」
『私も……!今日は本当に…時間を作ってくれてありがとう。』
お互いに〝ありがとう〟という言葉を最後に
言葉を交わすことなく前を向いて歩き出す。
本当にありがとう_____
若利。
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in 白鳥沢
天童「!若利クンおかえり〜!
どうだった??あなたと会ったんデショ〜?」
若利「ああ。」
天童「気持ちは?伝えたの?」
若利「伝えた___だが、
あなたにはもう好きな奴がいるように感じた。」
天童「それでよかったの?」
若利「気持ちを伝えられただけで十分だ。」
天童「若利クン健気っ!」
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日曜日の夕方。
宮城から帰り、神戸空港に到着。
『予定より遅くなっちゃった、
えっと、バス停は__あっ、あった。』
外はもう暗くなっていて、
少し雨も降っているようだ。
しまったな……バス停降りてからも少し歩くのに傘がない…
『(売店で買うか…)』
?「よ。長いこと待っとったで。おかえり。」
『え…?』
目の前に立っていたのは、
『侑……!』
侑だった。
『え、どうしてここに…?』
侑「ふっふ、サプライズや!迎えに来たんやで。」))ニコッ
ドキッ…
『う、え、ああ…//そうなんだ!!ありがとう…!』
一瞬だけ胸が痛くなったような、、
まぁ、、気のせいかな。
侑「なんやねんッ!もっと喜べや。」
『でも私がこの便で帰ってくるってよく分かったね?』
侑「せやろ〜?さすが俺や。」
わざわざバスに乗って迎えに来てくれたんだ、
『もうこんな時間だけど、大丈夫なの?』
時計を見ると午後8時。
ここから家までバスで1時間くらいはかかるし、、
きっと着くのは9時過ぎだ。
侑「ん?ああ、俺、内緒で家出てきてもーたから。」
スマホを見ながら平然とそういう彼。
『ええ!?だめでしょ!ちゃんと連絡しなきゃ!』
侑「大丈夫やって、言うたらサムも来たがるんやもん!」
『でも……』
侑「俺がおらんかったら
自分バス降りてからからずぶ濡れやで??」
自慢げに傘を見せる侑。
『う…それは、、ありがたいけど……』
侑「な!せやから早う帰ろうや。」
ヒョイッ、と私の荷物を持ち、バス停へ向かう。
『もう……笑』
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バスに乗り、ここから1時間近くかけて家まで向かう。
ガタンッ_
雨はさらに酷くなっていて、
水溜まりには街の灯りが反射している。
『雨……酷くなってきたね、、__侑?』
コトン。
スースーと静かな寝息を立てて、私の肩に頭をのせて眠っている。
疲れてるんだ。
部活…頑張ってるもんね、
『わざわざ迎えにきてくれて…………ありがとう。』
コトン、と自然と私も彼の方に体を寄せる。
『………私、、父さんとちゃんと話をしたら、、
気持ちを伝えたい人がいるの。』
ガタンッ__
『…………応援してね。』
気づいてしまったの。
自分の気持ちに。
もう同じことは繰り返さない。
ちゃんと前を向いて歩いていく。
だから、、伝えたい。
______真っ直ぐに「好き」だって。
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侑「ふぁ……雨酷なってるやん。」
『そうだね、、侑が傘持って来てくれてなかったら
終わってた。』
侑「ふっふ、感謝してな?…よし、相合傘やな。」
グイッ。
『わっ!…ちょっ、近いから、、!』
そう言いつつ、傘に入り歩き出す。
侑「ほら、もっと近づかんと濡れてまうで??」
『…半分からかってるよね、絶対。』
侑「からかってへん。
……お前には常に本気や。」
『…っ/ど、どういう意味でしょうか。』
侑「さぁ、どういう意味やと思う?」
どういう意味やと思う?って……
私が聞きたいんですけども…
暫く歩き、家の前まで来たところで、
『本当にありがとう!助かったよ。
明日学校でね!』))ニコッ
侑「おん、風邪ひかんようにな。
ほなおやすみ。」
『うん!おやすみ。』
バタン。
侑「………応援してねって…………
自分誰に〝言う〟つもりなん……。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!