第88話

82 再会。
7,034
2020/07/06 06:20
待ち合わせの時間。



____ここは、白鳥沢近くの公園。








『ふぅ………』





久しぶりだから、、会うのも話すのも緊張する。






ザッ__。




砂利を踏む音が聞こえ、


顔を上げると



そこには、〝あの頃〟と何も変わらない若利がいた。







『っ…久しぶり……』




若利「ああ……久しぶりだな、あなた。」






部活終わりで、白鳥沢のジャージを着ている。




彼の声は落ち着いていて、私だけが緊張しているようだ。





若利「…そこのベンチに座らないか?

話があるんだろう?」





『う、うん、そうだね、座ろう。』





2人でベンチに腰掛け、暫く沈黙が流れる。







『っあ……あのね、、わかと…あっ、、牛島先輩…』





もう彼女ではないのだから、、彼に直接呼び捨てなんて…



しちゃいけないよね、



若利「若利でいい。…ゆっくりでいいから、

話してくれ。」




『…うん、ありがとう。



まず……私が……若利に別れを告げた理由を話たいの、』








それから__暫く何も言わずに私の話を聞いてくれた。





私の家の事、父さんの事も含めて、全部。






『ごめんなさいなんて……偉そうな事は言えない、。



ただ……言いたかったの、何も言わずに去ってしまったから…』






彼の顔を見ることが出来ない。




私は____泣いてしまっているから。







なんで私が泣いてるんだ。




『っ………』



辛い思いをしたのは………彼なのに。







若利「………あなた___泣くな。」





『_ごめん、、私が泣くのはおかしい…よね、、』





若利「いや、お前には笑っていて欲しい。


…俺はお前に似合う男になりたかった。



お前はつねに完璧だと思っていた。


……でも、、影で沢山努力をしていたんだな、、」




ポンッ__




『_!若利…違うよ私…私全然だめで、、っ…

私があの時ちゃんと…ッ__』







ギュッ。







『え……』





ゆっくりと抱きしめられ、


じんわりと彼の温もりを感じる。





若利「すまない……ただもう泣くな。

笑え。___俺はお前が無理をしているのを知っていた。



それをあの時言おうとしたんだ。


でも……遅かった。



もっと俺が早くからお前の心に寄り添ってやるべきだった。」





『っ…うっ……』





若利「………もう、、〝戻れない〟のは__分かっている。


最後に1つだけ言わせてくれないか。」







『なに……?』



ゆっくりと離し、真っ直ぐな瞳で私を見つめる。





若利「…………俺は、今でもお前が好きだ。」







『_____…ありがとう。』



息が詰まる感覚がした。






そして驚いた。




……彼はとっくに新しい人を見つけているとおもったから。




ただ、、私は〝私も〟という言葉を発することはもう出来なかった。







……何故なのかは分かっていた。





好きだという言葉を聞いた瞬間、〝彼〟の顔が浮かんだから。









若利「会えて良かった。



……ありがとうな。」



『私も……!今日は本当に…時間を作ってくれてありがとう。』






お互いに〝ありがとう〟という言葉を最後に





言葉を交わすことなく前を向いて歩き出す。






本当にありがとう_____








若利。








_____________________
in 白鳥沢




天童「!若利クンおかえり〜!
どうだった??あなたと会ったんデショ〜?」






若利「ああ。」




天童「気持ちは?伝えたの?」



若利「伝えた___だが、


あなたにはもう好きな奴がいるように感じた。」




天童「それでよかったの?」



若利「気持ちを伝えられただけで十分だ。」



天童「若利クン健気っ!」


_____________________




日曜日の夕方。



宮城から帰り、神戸空港に到着。






『予定より遅くなっちゃった、

えっと、バス停は__あっ、あった。』





外はもう暗くなっていて、
少し雨も降っているようだ。



しまったな……バス停降りてからも少し歩くのに傘がない…





『(売店で買うか…)』







?「よ。長いこと待っとったで。おかえり。」








『え…?』








目の前に立っていたのは、







『侑……!』






侑だった。






『え、どうしてここに…?』





侑「ふっふ、サプライズや!迎えに来たんやで。」))ニコッ





ドキッ…






『う、え、ああ…//そうなんだ!!ありがとう…!』





一瞬だけ胸が痛くなったような、、


まぁ、、気のせいかな。





侑「なんやねんッ!もっと喜べや。」



『でも私がこの便で帰ってくるってよく分かったね?』





侑「せやろ〜?さすが俺や。」




わざわざバスに乗って迎えに来てくれたんだ、





『もうこんな時間だけど、大丈夫なの?』




時計を見ると午後8時。



ここから家までバスで1時間くらいはかかるし、、





きっと着くのは9時過ぎだ。





侑「ん?ああ、俺、内緒で家出てきてもーたから。」


スマホを見ながら平然とそういう彼。



『ええ!?だめでしょ!ちゃんと連絡しなきゃ!』




侑「大丈夫やって、言うたらサムも来たがるんやもん!」




『でも……』




侑「俺がおらんかったら
自分バス降りてからからずぶ濡れやで??」



自慢げに傘を見せる侑。




『う…それは、、ありがたいけど……』





侑「な!せやから早う帰ろうや。」




ヒョイッ、と私の荷物を持ち、バス停へ向かう。





『もう……笑』






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バスに乗り、ここから1時間近くかけて家まで向かう。




ガタンッ_




雨はさらに酷くなっていて、
水溜まりには街の灯りが反射している。




『雨……酷くなってきたね、、__侑?』





コトン。





スースーと静かな寝息を立てて、私の肩に頭をのせて眠っている。


疲れてるんだ。




部活…頑張ってるもんね、





『わざわざ迎えにきてくれて…………ありがとう。』





コトン、と自然と私も彼の方に体を寄せる。





『………私、、父さんとちゃんと話をしたら、、



気持ちを伝えたい人がいるの。』






ガタンッ__







『…………応援してね。』







気づいてしまったの。


自分の気持ちに。





もう同じことは繰り返さない。





ちゃんと前を向いて歩いていく。





だから、、伝えたい。




______真っ直ぐに「好き」だって。




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侑「ふぁ……雨酷なってるやん。」



『そうだね、、侑が傘持って来てくれてなかったら
終わってた。』





侑「ふっふ、感謝してな?…よし、相合傘やな。」



グイッ。



『わっ!…ちょっ、近いから、、!』




そう言いつつ、傘に入り歩き出す。


侑「ほら、もっと近づかんと濡れてまうで??」




『…半分からかってるよね、絶対。』


侑「からかってへん。



……お前には常に本気や。」






『…っ/ど、どういう意味でしょうか。』






侑「さぁ、どういう意味やと思う?」






どういう意味やと思う?って……




私が聞きたいんですけども…






暫く歩き、家の前まで来たところで、


『本当にありがとう!助かったよ。

明日学校でね!』))ニコッ




侑「おん、風邪ひかんようにな。

ほなおやすみ。」




『うん!おやすみ。』





バタン。















































侑「………応援してねって…………


自分誰に〝言う〟つもりなん……。」






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