午後六時、夏になりすっかり日も長くなった。
数ヶ月前はこの時間はすっかり辺りは暗闇に包まれていたはずなのになと思いながら私は冷たい水を顔に擦り付けて血糊を落としていた。
今やっているバイトはお化け屋敷のオバケ役。
かなり大きな遊園地の、凝ったお化け屋敷でバイトをしている訳だけどお手当てが良くて中々悪くない。
だが今血糊が取れなくて苦戦中だ。
まぁそれは良しとしよう、血糊が付いているのは別に取れるから良いのだ。
だが、この憑き物は祓えないのだ、事件を解決するまでは。
...これは10年前殺害されたであろう少年とバイトに追われる女の子(わたし)のはなし。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!