第16話

違和感
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2025/06/22 12:28 更新


北条時行
さて皆、偵察には
どんな準備をすれば良い?

弧次郎
身軽な方が良い。
二日分の飯と少しの路銀で充分でしょ。
風間玄蕃
金はあるだけ欲しいけどな。
盛高の奴騙くらかしてふんだくろうぜ。
…またゲンバ君はそういう事言う。
飛燕
諏訪大社うちだって無駄遣いをする訳には…、

目の前にある一台の手押し車と、
それに乗せられている大量の米と金。

それは異様な圧を放っていた。

飛燕
(何だこれ。)

しかも看板が立てられており、
「 時行様へ 必ず持っていくべし 」と書かれていた。

飛燕
(そして一番意味がわからないのが…。)

頼重が、見ている。
心配そうに見ている!!

飛燕
(しかもなぜ手押し車の下から見ている?)

父様。こんな大量の食糧とお金何に使えと?
諏訪頼重
あっ…いやー…、
時行様が餓死したら…血筋が絶えるんで。

弧次郎
放っといて行こうぜ!
北条時行
ああ、急ごう!

飛燕
おいゲンバ、
ちゃっかり金貰っていくな、行くぞ。
風間玄蕃
あ、おいまだちょっとしか取ってないぞ!?

諏訪頼重
……。


弧次郎
防寒はこんなもんか。
亜也子
雫特性の綿入り小袖あったかい。
北条時行
これ一枚で充分だな。

飛燕
私は小刀を忍ばせておくけど、
武器は打刀一本で充分でしょ。
飛燕
軽装の方が疑われないし逃げやすい。

私達は小屋を出る。するとそこには、

飛燕
何だこの量。戦か?戦にでもいくのか?

そこには大量の刀や、衣服。狼煙や炭、毛布など。
大量の物質が置かれていた。

しかも先程の看板まで添えて。

飛燕
(いくらなんでもなんだよこの量。)

私は気づいた。

諏訪頼重
……。

頼重が、見て来る。
暇なカレー屋の店主の様に、じっと見てくる!

北条時行
今日はほんと変ですよ頼重殿!?
諏訪頼重
いや…、凍死したり現地に敵兵が百万騎いたら…
血筋がね、血筋血筋、ウヘヘヘ。
風間玄蕃
血筋中毒か?


北条時行
全く。なんなんだあれは。

我々は馬で諏訪の北まで駆ける。

たまーにあるの。ああなる事。
今日のはちょっと酷いけど。

飛燕
ちょっとで済むのか?
北条時行
ああなる?

不安そうになったり、
怒りっぽくなったり。
水飲むだけで太ったり、
酸っぱい物ばかり食べたり。

弧次郎
赤子でもできたのか。
飛燕
何考えてんだあの人は。


諏訪領の現在の北端。中山庄。

弧次郎
ギリギリ日暮れまでに辿り着けたな。
亜也子
ぱっと見は平和そう。
飛燕
(何だろう。ここに来てから、
ずっと何か違和感を感じる。)

雫が地図を手に広げた。

手順を確認します。
諏訪領とは言え端の端なので情報が少ない。
なのでまず、
諏訪大社の使いとして聞き込みをし、

何か、微かな物音を感じた。

飛燕
……。
飛燕
(気の所為か…?)

私は念の為小刀を抜く。

次に明日村の周囲を見て回ります。
敵は来そうか、もし来るなら時間と規模は。
守るなら兵は何人必要か。

情報を纏めて諏訪大社に帰って報こ________

飛燕
ッ!!
今一瞬だけ感じ取れた、明確な違和感。

刹那。

ギィィンッ!!

北条時行
!?
弧次郎
亜也子

刃と刃がぶつかり、
混ざり合う事による衝撃音が鳴り響く。

飛燕
此処に来た時から後でも着けてたか?通りで。
飛燕
やっと分かった。
この違和感が何なのか。

違和感の正体。それは明確な敵意。

弧次郎
…何だよこの村。
弧次郎
既に敵方に落ちてんじゃねーか。

茂みから目の前に出て来たのは、
水色の長髪を一つに纏めた十代半ば程の一人の少年。

飛燕
(二刀流か。
出てくるまで気配に気づけなかった。)

そうなれば相当の手練。

飛燕
相性悪いと面倒だなぁ…。

面倒な事に、我々は今囲まれている。
辺りには松明を持った伏兵が多く潜んでいた。

飛燕
やるしかないか。

正面から向かってくる二刀使い。
私はその刀をギリギリで受け止める。

飛燕
(斬撃が重い…!)

弧次郎
飛燕!!
亜也子
飛燕ちゃん!!

軽量で瞬発性を重視する暗殺型の私では、

今回は相手が悪すぎる。
真っ向での力比べではまず勝てない。

それに気づいた二人が即座に入れ替わる。

飛燕
(…若はゲンバが逃してくれるだろうし、
なら私は周りの敵を一掃でもするか?)

風間玄蕃
おいおい聞いてないぞ。
俺は戦い専門外だ。
風間玄蕃
逃げるぞ坊。
あの二刀は二人に任せとけ。
飛燕は道開けろ。
風間玄蕃
周りの敵にもいつ囲まれるか分からない。

北条時行
……いや、
北条時行
二人とも強くなってる。
北条時行
半年前よりずっと!

飛燕
そりゃそうですよ。
あの二人最近偶にだけど、
師匠に稽古つけて貰ってますし。
本当に偶にだけど。

自主練も結構してるらしいし、
私も負けてられないな。

飛燕
(もっと強くならないと。)

北条時行
あれ、

若には何か思うところがある様だった。

北条時行
てゆうか速さも威力も
私と稽古をしている時と全然違う!
飛燕
(稽古してたんだ。)
北条時行
じゃああれ・・は…、
北条時行
あれは…、
北条時行
あれらは甘やかされていたのか!!

風間玄蕃
気づけその場で。

飛燕
………。

二人共、どんどん力を付けていく。

飛燕
(私はなんと無力なのだろう。)

もっと、私が強ければ。

飛燕
悔しい思いもしなくても済むのかな。

その時二刀使いが二人から一度距離を取った。

・・・
もしや、雫か?
・・・
忘れたか?以前飯を貰った…、

…!
吹雪君?

吹雪とやらは刀を地に置くと、
膝をついて軽く頭を下げる。

・・・
…ご無礼をお許し下さい。
・・・
本物の諏訪大社の身遣いとは。

・・・
そこの三人から獣の気配がしたので、
てっきり変装した敵の斥候かと。
弧次郎
はぁ!?
亜也子
はぁ!?
飛燕
失礼な。

その少年は名乗る。

吹雪
吹雪と申します。
吹雪
各地を放浪し、支える主を探しております。

飛燕
あれ…、

敵が居なくなった事で心に余裕が持てた。
だから中山庄を一望してみたのだが、

飛燕
この景色…。
飛燕
見覚え・・・がある様な…。

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