〜皇輝side〜

『だれ、ですか、？』

その言葉で目の前が真っ白になった。

え？

花莉、？

嘘だよね？冗談だよね？いや、言葉が本気だったとしても、今だけだよね？久しぶりに目が覚めたから、記憶が混乱してるだけだよね？

そう思って、花莉の方にもう一度目を向ける。


でも、花莉は、不思議そうにこちらを見ていた。

本気だ…冗談でも嘘でも一時的でもない…

皇輝「はな、り、？」

阿部「こうき…」

『お兄ちゃん、私…』

阿部「うん。いま、お医者さん呼ぶから待っててね？」

『うん。』

医者の方が来るあいだ、花莉は、ずっとぼーとしていて、こちらに目を向けてくれなかった

〜阿部side〜

いつも通り朝からお見舞いに行く。
花莉の部屋の近くまで来た時、花莉の部屋で泊まっている、皇輝の声が聞こえた。

皇輝「花莉！」

何かあったのかと焦り、慌てて部屋に入る。

皇輝は花莉の手を握ったまま、花莉の名前を呼び続けていた。

阿部「皇輝？どうした？」

そう、声を発した時、花莉の目がうっすらと開くのがわかった。

俺は呆然としてその場に立ちすくむ。

『あ、れ？ここ、どこ？』

そんなことを聞く花莉に皇輝はまくし立てるように、病院にいることを伝えていた。

でも花莉は、そんな皇輝のことを目を見開いて見ていた。

なにかが違う。そう思った時だった。

『だれですか、？』

皇輝の呆然としたような声が聞こえた。

皇輝「はな、り、？」

阿部「こうき…」

時間がやけにゆっくりに感じた。

『お兄ちゃん、私…』

花莉のその言葉でハッとして、

阿部「うん。いま、お医者さん呼ぶから待っててね？」

と言ってナースコールを押した。

花莉は、確かに俺のことは覚えてくれている。でも皇輝は…

お医者さんが来るまでの間、花莉は、皇輝の方を一切見ようとせず、皇輝は、呆然としたまま自分を見ない花莉のことを見つめていた。