阿部side

花莉は、皇輝だけではなく、花莉がいたグループ。少年忍者のことも忘れていた。

医者「花莉さんの脳をしらべたところ特に以上はありませんでした。」

阿部「そう、ですか……」

皇輝「じゃあ、なんで…花莉は……」

医者「おそらく、脳に強い衝撃があったからかと…花莉さんの場合、頭を強く打ったことによる、脳震盪を起こしています。その場合ですと、一定期間の記憶を忘れていたり、ある特定の人物だけを忘れてしまうケースが稀に起こります。」





皇輝「花莉の記憶は、元に戻りますか？」

医者「まだなんとも言えません。が、記憶は手続き記憶のように、頭の中に残っていることが多いです。決して本人の頭の中から完全に消えるということはありません。ただその記憶が思い出せないくらい奥深くに行ってしまった…ですから、花莉さんには今まで通りに接してあげてください。あと、花莉さんとの思い出の場所を巡ることもおすすめします。こちらでも、医学療法を使い、花莉さんが、少しでも早く記憶を取り戻せるようにお手伝いさせていただきますが、花莉さんのやりたいこと、行きたい場所、花莉さんが行った思い出の地を巡る、花莉さんに言った言葉をかけてあげることで、思い出すこともあります。」




阿部「わかりました。ありがとうございます。これから、よろしくお願いします」


医者「こちらも花莉さんが少しでも早く記憶を取り戻せるように頑張らさせていただきます。よろしくお願いします」

皇輝side

病室に戻ると、花莉は眠っていた。

皇輝「ごめんね…花莉…ごめん…」

『あ、の……』

皇輝「え？あ、花莉…」

『ごめ、なさい…』

皇輝「え、？」

『ごめんなさい…覚えて無くて…』

皇輝「っ……」

『ごめんなさい…悲しい思い、させてますよね…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…』

皇輝「っ！そんなに、謝らなくていいよ？」

『でも…』

皇輝「大丈夫だから、こうなっちゃったのは花莉のせいじゃないから、大丈夫。これから、一緒に色んなところにお出かけしようね？いっぱい色んなところ行って、また、色んな思い出作ろう？そしたら、大丈夫だから。」

何を根拠に大丈夫なんて言葉使ってるんだろう…でも、今は花莉を不安にさせたくなくて、今できる精一杯の笑顔を花莉に向けた。

花莉side

これ、私、？
少年忍者ってグループに入ってたんだってことを看護師さんに教えてもらって、すごくどんなグループなのか気になったから、スマホをわたしてもらい、検索をかけて、一番上にあったライブ動画をタップした。

流れてきたのは、軽快なメロディで、楽しそうに踊る、私とメンバー？の子たちだった。


太陽に包まれてキラキラ光る笑顔
未来を繋ぐ道を進んでゆく
ふわりと浮かぶ綿毛
追いかける君の手は
翼にだってなれる
飛んで行ける

楽しそうだった。本当に。

『太陽みたいに咲く果てない君の笑顔』

『カラフルに色づいた未来の花』

『手のひらからふわりと』

『舞い上がる白い羽』

『君の夢風になる』

『飛んでゆくよ』

いつの間にか口ずさんでいた。
意識しなくてもスラスラと出てくる言葉たち。

看護師「歌、覚えてるんですね…」

『そう、みたいです…』

歌は覚えているのに、なんで、ほかは思い出せないのだろう…なんで…なんで…

看護師「私は応援しています」

『え、？』

看護師「あ、ごめんなさい…私、花莉ちゃんの大ファンなの。だからね、ずっと応援しています。」

『…ありがとうございます』

心が温かくなるのを感じた。

でも、それと同時に申し訳無さも感じたんだ。私のせいで悲しい思いをしている人がたくさんいる。お兄ちゃんも、メンバーも、ファンにまで心配かけている。

こんな自分が少し嫌いになった。