〜織山side〜



『おり！！！！！！』

いつもよりも強い口調の花莉の俺を呼ぶ声が頭にこだました。

何事だと思い立ち止まり後ろを向いたとほぼ同時に、俺は花莉から思い切り突き飛ばされた。

織山「え、？」

まさか花莉から突き飛ばされるとは思わなかったし、花莉だとは思えないくらいの力で押された俺はそのままコンクリートに倒れ込んだ。

幸い頭は打たなくて…

織山「なにす………っ？！！！！！！」

ｷｷｨｰｰｰｰｰﾄﾞﾝ!!!

遅かった。

俺が動くより先に、鈍い音とともに花莉は宙に投げ飛ばされた。

頭が真っ白になって、何も考えられなくなった。

織山「はな、り、？？？」

頭が真っ白になった中でも、体は無意識のうちに動いていて、いつの間にか花莉の方に走り出していた。

花莉が横たわっている無機質な地面は赤い色で染まっていた。

フラフラと花莉に近寄る。

皇輝くんが花莉の横で必死になにか言っている。

湧「なお、いったん離れよう…」

ショックを受けていた俺の肩に手を乗せてその場からいったん離れるように言った湧。
手をひかれてフラフラと湧についていった。

〜阿部ちゃんside〜


その日は、ちょうどレッスンが終わって、帰る準備をしていた。

思っていたより、レッスンが長引いて、妹の花莉との約束の時間に遅れそうだったから、花莉にメールを送ろうとしたんだ。

そしたら……

廊下で慌ただしく走る音が聞こえて、その足音が止まったと思ったら、勢いよくレッスン室の扉が開いた。

スノマネ「阿部！！！今すぐ病院に行くぞ！！！！」

阿部ちゃん「、え？」

俺、どこも具合悪くないよ？

スノマネ「花莉が！！花莉がメンバーをかばって信号無視したトラックに轢かれた！！！」

頭から血の気が引いた。

花莉が、？俺の妹が？

阿部ちゃん「え、ま、はな……り、？」

メンバーたちがなにか言っているのに全然聞こえなくて、音のない世界にいるかのようだった。

そのまま、立っていられなくなって、床に膝をつく。

岩本「阿部………」

ひかるから、声をかけられて、ようやく、今起こっているすべてのことを理解した。

フラフラと立ち上がってマネージャーの近くに行くと、マネージャーは急ぐよと言って、駐車場まで走り出した。

俺とついてきてくれることになった、ふっかが、俺の手をひいて走ってくれる。

〜皇輝side〜


いきなり走り出した花莉にびっくりして、とっさに

皇輝「花莉？！」

と叫んだとき、

花莉の

『おり！！！！！！！』

という叫び声が聞こえた。

視界にものすごいスピードのトラック
が向かっているのが見えて、俺は体を動かしていた。

織山が花莉の声に驚いたように道路の真ん中で立ち止まり振り返る。それと同時に花莉が織山を押したのが見えた。

その光景がスローモーションになったかのようにゆっくりだった。

皇輝「花莉！！！！！！！！」

叫んだ時にはもう遅くて…

ｷｷｨｰｰｰｰｰﾄﾞﾝ!

そんな鈍い音とともに花莉が宙に投げ飛ばされた。

皇輝「花莉！！！！！！！」

そう、もう一度叫んで、地面に体を打ち付けて動かなくなった花莉に駆け寄る。

皇輝「花莉！？花莉！！！！！」

頭から血を流している花莉を見て、何も考えられなくなるところだった。

俺は頭を横にブンブンとふって周りに叫んだ。

皇輝「檜山！救急車！！！！！湧！おりをお願い！！海琉！警察呼んで！！！！！」

皇輝「花莉？花莉？聞こえる？」

そう、呼びかけても、冷たくなった花莉は動かなかった。

救急車が来るのがものすごく遅く感じる。