～皇輝side～

21:00pm


花莉が事故にあってから、もう、2週間が経った。

目の前には、静かに眠る花莉がいる。

早く目覚めてよ…

そう、願っても大好きな人はピクリとも動いてくれない。

皇輝「花莉…そろそろ目覚まして、？じゃないと僕…」

気がおかしくなりそうだった。

いつもあるはずの笑顔が目の前にはなくて、いつもリハ場に響いてくるはずの元気な声もきれいな歌声も、スキマ時間に聞こえてくる笑い声も、聞こえてこない。いつもあったはずのいつも通りが、ない。

グループのみんなも心ここに在らずみたいな感じで、リーダーの僕が少しでも士気を挙げられたらいいのに。

そんなことすら出来なくて。

皇輝「花莉…目覚まして…お願いだから…いつもの笑顔見せてよ…」

そんな声が病室の暗闇の中に吸い込まれて言った。



翌朝―――

皇輝「…はな、り、？」

握っていた手がかすかに動いた気がして目を覚ました。

皇輝「花莉？」

そう、声に出してもう一度呼びかけると、握っていた手が少し力を入れたのがわかる。

皇輝「花莉！！！」

そう、思わず叫んだとき、病室の扉が開いた。

阿部「皇輝？どうした？」

そう声が聞こえたと同時に、花莉の目がうっすらと開いた。

『あ、れ？ここどこ、？』

目から涙が出そうになるのを堪え花莉の手を握り返した。

皇輝「ここ、病院だよ？花莉、あれから、2週間目を覚まさなかったんだよ…目、覚めてよかった…｣

そう、まくし立てるように花莉に言葉をかけると、花莉は僕の方を向いて目を見開いていた。

皇輝「花莉？大丈夫？具合わる…」

『…すか、？』

皇輝「え、？」

 次の瞬間花莉から発せられた言葉は、僕にとって衝撃的なものだった。

『っ…誰ですか、？』

～花莉side～

「花莉」

そんな声が聞こえた。
誰？確かに聞いたことがある声なのに、モヤがかかったみたいに思い出せない。

でも、目を覚まさなきゃいけない気がして、真っ暗な暗闇から、逃げるように目を開けた。

 

 

見慣れない天井。

『あ、れ？ここどこ、？』

誰かが私の名前を呼びながら私の質問に答えてくれてる。
2週間眠ったままだったらしい。

手が、温かい。
誰か私の手を握ってる、？

答えを求めるように、ゆっくり視線を天井から、右に移す。

だ、れ？

見慣れない顔。でも、どこかで見たことがある顔。

その人の先には、目を見開いた亮平お兄ちゃん。

『……すか、？』

そう問いかけたけど、ずっと眠っていたせいか、声が思うように出なかった。

？？「え、？」

『誰ですか、？』

そう問いかけると、男の子は目を見開いて、はな、り、？とつっかえながら私の名前を呼んだ。