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第2話

見学しに行こう
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2025/08/20 08:20 更新
「杏!久しぶり、元気?」
放課後、家に帰ろうとしていたところだった。やほやほー、なんて言いながら校門で手を振ってくる親友に驚く。
「桃華!?ど、どうしてこんなとこ…。」
慌てて近くによりながら聞くと
「いやー、杏がひとりでやってけてるか不安でねー。」
と返された。
「んもう、子どもじゃないんだよ…!」
なるべく目立たないように小さい声で言う。
「あ、ていうか桃華、制服…!!だ、大丈夫なの?」
つい最近まで私も着ていた制服に身を包んだ桃華の耳に口を寄せた。
華女はジャンパースカートとこの辺りでは珍しい制服が故に他校から目をつけられやすく、そして「アイツ、華女かよ。いいよなー、お嬢様は。」なんて影口を叩かれることが多い。それに加え、教師陣も由緒正しき学園という意識が高くて他校(特に都立)を嫌う教師が一部いるのだ。私たちが中学2年生の時の先生が良い例だった。口癖は「この誇り高き学園の制服を着て低俗な都立などと遊ばないこと。」。華女に通っていると小学生からそんな環境なのだから都立全般を嫌う生徒ももちろん存在している。そのため制服で他校と交流するのは賢い選択とは言えない。
「えー?カンケーないでしょ。むしろ誇り高き学園の制服なら堂々と着るべき!」
桃華の返事に小さく笑った。
「うん、桃華はそういう人だったね。」
私が笑ったのが嬉しかったのか
「うん!!桃華は変わんないぞ!!」
なんて声を張り上げるから焦る。目立つのは苦手だ。
すると
「で、で、で〜????」
と突然肘でこちらを突かれた。
「な、なに…。」
目を逸らして知らんぷりをする。が、効かない。
「好きな人!!いるんでしょ!まず何部!何部!?」
「わー!ちょ、本当に静かに…。」
しーっと慌てて口を押さえた。
「教えてよ〜!水臭いじゃないのよ〜!」
ぶーぶーと口を尖らせる桃華。女子校で出会いがないからって私に恋バナを求めないでほしい。
「い、言わないよ…。」
言ったら絶対見に行こうって言う。
「え…教えてくれないの…?」
だから、絶対言わない。
「どうして…?」
…絶対言わないもん。
「応援したいの…。」
ぜ、絶対…い、言わない。
「だって、杏は親友だから…。」
私がそういうの弱いってことを知っててやっているのだから困る。
「………野球、部…らしい。」
観念して小さく言った。らしい、と言ったのはうちの学校に野球部がないと聞いていたからだ。でも本人が野球部だって言ってたんだもん。
「え!!かっこいいじゃん!!まじ!野球部!!あるの!いいね!見に行こう!!」
「そうなると思った。嫌だよ…。」
口では断りつつもこうなった桃華は止まらないということを知っていた。伊達に親友やってない。桃華は恋バナ以上に野球が好きだって、それもわかっていた。
「さささ、グラウンド案内してー!」
ほらね。

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