第96話

♯87.バレーボール教室
210
2023/09/29 11:00
昼休み、龍くんと2人で昨日の喧嘩のことについて先輩たちに話しに行く


東峰「えぇ……取っ組み合いの喧嘩って、」


菅原「合宿の時からギクシャクしてたからなー。あいつら」


田中「春高予選も近いのに大丈夫なんスかね」


あなた「私はあの子たちなら平気だと思いますよ〜」


そう言えば、大地さん以外の人が不思議そうな顔でこちらを見てきた


澤村「あなたの言う通りかもな……あいつらの喧嘩って今に始まったことじゃないだろ」


外を眺めながら話す大地さんの言葉に、初日のことを思い出す


教頭のカツラをぶっ飛ばしたり、大地さんから閉め出されたり……


初めから色々とやらかしてるからなぁ、あの2人


田中「まあ確かに。そういうのを色々乗り越えてきたわけだし」


澤村「な!だからさ、俺たちは信じて待とう。あいつらを」


私たちの方を振り向く大地さんに、さっき龍くんが買ってくれたぐんぐん牛乳にストローをさしてから頷いた




田中「……おい。それ"買ってやった"んじゃなくて"買わされた"が正しいんだからな」


あなた「人聞きの悪い!!昨日私を悪者扱いしたんだから、奢って当然ですぅ」


及川さんは2人の喧嘩を止めようと頑張っただけなのに、第一声があれなのは失礼すぎる!!


てゆうか、龍くんが止めに入ってたらきっと2人のこと殴ってたから!


菅原「あー。男2人の喧嘩に参戦して、日向のことも影山のこともボコボコにしちゃったんだろ?」


あなた「参戦してないです!!ボコボコにもしてないし……ちょっとぽーいって投げただけですから」


東峰「ぽーいって……そういえば、昔柔道習ってたんだっけ?」


あなた「はいっ!」


自分の身は自分で守れるよう、ある程度力をつけたいと思い習った柔道


あなた「私、結構強かったんですよ〜」


澤村「だからって、男同士の喧嘩に交ざる馬鹿がいるか」


あなた「あた、」


胸を張って自慢げにしていれば、大地さんに頭をはたかれてしまった


あなた「だから、私は止めたんです!!交ざってません!」


澤村「まぁ喧嘩を止めようとしてくれたのはありがたいが、」


抗議する私に、大地さんは温かい笑顔を向け、


澤村「あなたは女の子なんだから、あんまり危険なことはするなよ」


ポンポンと頭を優しく撫でてくれた




あなた「わぁ……そんなこと家族以外に言われることないので、キュンとしちゃいました〜!」


澤村「そお、か………………え"!?」


菅原「俺も思ってたぞ!!!大地が言わなきゃ俺が言おうとしてたから!!!」


田中「スガさん、必死すぎ……」


東峰「そんなに撫でたらあなたちゃんの髪の毛ぐしゃぐしゃになっちゃうって」


あなた「ふふっ。菅さんもありがとうございます!烏野のお父さんとお母さんは優しいですね」










𓂃 𓈒𓏸◌










あなた「ただいま〜」


猛「おかえりあなた!!」


バタバタと慌ただしく出迎えてくれたのは、お姉ちゃんの子どもである猛くん


猛「早く行こうぜ!!」


あなた「分かった分かった。着替えてくるからあと少しだけ待ってて〜」


猛「は・や・く!!!」


あなた「分かったってば。ていうかまだ予定より早くない?」


だいぶ前から猛くんと一緒にちびっこバレーボール教室に行く約束をしていて、今日がその日


お姉ちゃんたちも忙しいらしく、ちょうど休みだった私に付き添ってくれないかって頼んできたんだよねぇ




及川「ちょおっと待ったあああああ!!!!!」


楽しみにしている猛くんの為に早く着替えようと部屋に向かう途中、先に帰っていた徹にぃが邪魔してきた


及川「せっかく休みが被ったんだから、今日は俺とあなたが一緒に過ごすんだよ!!!」


…………何を言っとんだこの兄は


猛「ずっと前からあなたはおれとバレーボール教室に行くって約束してたんだぞ!!」


及川「俺だってあなたと一緒にお家でゴロゴロするって約束してましたー」


あなた「そんな約束してないでしょ。子ども相手にみっともない」


ため息をひとつ吐いてから、徹にぃの背中を軽く叩く


あなた「というか、徹にぃは確か予定あったよね?」


だから私が猛くんに付き添う予定だったんだけど……


そう聞けば、目線をズラして「彼女に振られたから暇になった」と呟いていた


……また『私とバレー、どっちが大事なの!?』って言われて振られたんだろうなぁ


いや、今回も『私と岩泉くん、どっちが大切なの!?』の方かな




あなた「暇なら徹にぃが猛くんとバレー教室行く?私、ちょっと行きたいところがあるんだよね」


及川「ええ!!あなたと一緒じゃなきゃヤダー!!!」


あなた「いや、別に付き添いなんて2人も要らないでしょ」


及川「俺はあなたと一緒に休みを過ごしたいのー!!今日帰ってきたばっかなのに、夏休み入ったらまた合宿行っちゃうじゃん!!!」


ヤダヤダと駄々をこねだした徹にぃを、猛くんが冷たい目で見つめる


はぁ。どっちが子どもか分かんないよ








結局3人で行ったバレーボール教室


猛くんの送迎に高校生2人も必要だとは思わないけど……


猛くんも楽しめたようで、徹にぃにサーブを教えてほしいと頼んでいた




あなた「ごめん、待たせちゃっ…………何してるの?」


帰る前に御手洗に行きたかったから、先に外に出ておいてと2人に頼んだんだけど、


影山「え、あなたさん!?」


何故か飛雄くんが居て、徹にぃに頭を下げているし、


及川「ちが、誤解!!誤解だからその顔やめて!!!」


徹にぃはポーズを決めており、その2人を猛くんが撮影している光景が目に入った


あなた「まさか、うちの可愛い後輩をイジメてる訳じゃないよねぇ。徹にぃ?」


及川「うん違う!!一旦落ち着いて話を聞いて、ちょっと……待って!!!」


猛「あなたっていつも優しいのに、怒るとすげー怖いんだぜ。鬼みたいになる」


影山「ああ。知ってる」


及川「お前らは見てないで助けろよ!!!」








話を聞いたところ、偶然出会った飛雄くんのお願いを聞いてあげる交換条件として、あの写真を撮ったらしい


まぁ、徹にぃらしいっちゃらしいけど


及川「へー、できたらすごいじゃん。やれば」


影山「そんな簡単に言わないで下さい!日向には技術なんて無いんですよ!」


2人の会話を聞く限り、そのお願いとやらは変人速攻についての相談みたいだね


及川「勘違いするな。攻撃の主導権を握ってるのはお前じゃなくチビちゃんだ」


さすが徹にぃ。言ってることはどれも的を射てるように思う


及川「それで理解できないなら、お前は独裁の王様に逆戻りだね。行くよ猛、あなた」


そう言葉を残し、徹にぃはその場を後にした




及川「ってあなた!?何で突っ立ってんのさ!!」


階段を下りていった徹にぃだが、私が隣に居ないことに気づき、すぐ戻ってきた


あなた「いや、私行きたい所あるって言ったじゃん。先に帰っててよ」


及川「その場所まで俺もついていく!!」


あなた「あ、大丈夫です」


及川「全然大丈夫じゃないよ!!あ、分かった!飛雄と2人で行く気なんでしょ!?俺絶ッッッ対許さないからね!!」


あなた「猛くん。徹にぃのことちゃんとお家まで連れて帰ってあげてね。頼んだよ」


猛「おう!任せろ!!」


及川「ちょっとあなた!?猛も任せろじゃないし!!」

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