ー モトキ side ー
遠くで車の音がして
この家に俺とシルクだけになった事が分かる
やはり肩を震わした時に気付いたのだろう
本当に観察眼がずば抜けて良いな
そして先程とは別物の沈黙
シルクは人の悩みにいち早く気付く
表情や話し方 、素振りなど
少しでも違いがあると直ぐに分かってしまうらしい
その際に大抵悩みの種も分かるそうだ
" 自分自身の悩みより人間関係の悩みは顔に出る "
少し前シルクはそう語っていた
だから俺の悩みもバレているのだろう
だがシルクは一向に口を開かない
此奴はそういう奴だ
分かっている上であえて踏み込まない
それが有難い時もあればそうでない時もある
因みに今はそうでない時だ
俺が言うまで待っているんだ
根回しして時間は与えてくれる癖に
自分からは踏み込んでくれない
この方法で 1 番面倒なのはそっちなのに
本当に人たらしだと思う
「 … 単刀直入に言うと俺さ 」
「 何でダーマが機嫌悪いか分かんない 」
先に沈黙を破ったのは勿論俺だった
俺が切り出さなければずっとこのままだ
「 モトキって本当変なとこ鈍いよな 」
「 俺は理由だいたい察したけど言わないよ 」
「 本人と話し合うのが 1 番だし 」
いつもそうやってはぐらかす
「 でもさっきの沈黙だよ? 」
「 ダーマが会話してくれるとは … 」
「 さっきのはお前が一線引いてたからだろ 」
「 互いに一線引いてりゃ沈黙になるだろ 」
「 じゃあどうしろって 、 」
「 … いつものお前で良いんじゃねーの 」
「 顔も性格も欲も全部含めてお前だろ 」
「 ダーマもそれが好きなんだから隠すな 」
「 全部さらけ出せ 」
全部 、、
いや待て欲って何言ってんだ !?
「 な ー 、チクワ 」
そう言ってシルクはチクワに賛同を求め頭を撫でた
チクワは心底不思議そうな顔をしていた
シルクは結局イヤホンを付けて編集を始めてしまい
俺はそれ以上何も聞き出せなかった
「 ただいまー 」
マサイの声がして玄関が空いた
その隣には先程まで話題になっていた男
まぁ 、当の本人は全く知らないのだが
何事も無かったかのように俺もシルクも出迎える
実際そんなに何かあった訳でもない
あの後は割と普通に編集をした
そうだな 、1 つ変わったとすれば
俺が核心に気付いたことぐらい
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。