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第106話

モトダマ ⑤
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2022/11/03 08:00

ー モトキ side ー



遠くで車の音がして

この家に俺とシルクだけになった事が分かる


やはり肩を震わした時に気付いたのだろう

本当に観察眼がずば抜けて良いな

そして先程とは別物の沈黙


シルクは人の悩みにいち早く気付く

表情や話し方 、素振りなど

少しでも違いがあると直ぐに分かってしまうらしい

その際に大抵悩みの種も分かるそうだ

" 自分自身の悩みより人間関係の悩みは顔に出る "

少し前シルクはそう語っていた

だから俺の悩みもバレているのだろう

だがシルクは一向に口を開かない


此奴はそういう奴だ

分かっている上であえて踏み込まない

それが有難い時もあればそうでない時もある

因みに今はそうでない時だ

俺が言うまで待っているんだ

根回しして時間は与えてくれる癖に

自分からは踏み込んでくれない

この方法で 1 番面倒なのはそっちなのに

本当に人たらしだと思う


「 … 単刀直入に言うと俺さ 」

「 何でダーマが機嫌悪いか分かんない 」


先に沈黙を破ったのは勿論俺だった

俺が切り出さなければずっとこのままだ


「 モトキって本当変なとこ鈍いよな 」

「 俺は理由だいたい察したけど言わないよ 」

「 本人と話し合うのが 1 番だし 」


いつもそうやってはぐらかす


「 でもさっきの沈黙だよ? 」

「 ダーマが会話してくれるとは … 」


「 さっきのはお前が一線引いてたからだろ 」

「 互いに一線引いてりゃ沈黙になるだろ 」


「 じゃあどうしろって 、 」


「 … いつものお前で良いんじゃねーの 」

「 顔も性格も欲も全部含めてお前だろ 」

「 ダーマもそれが好きなんだから隠すな 」

「 全部さらけ出せ 」


全部 、、

いや待て欲って何言ってんだ !?


「 な ー 、チクワ 」


そう言ってシルクはチクワに賛同を求め頭を撫でた

チクワは心底不思議そうな顔をしていた

シルクは結局イヤホンを付けて編集を始めてしまい
俺はそれ以上何も聞き出せなかった








「 ただいまー 」


マサイの声がして玄関が空いた

その隣には先程まで話題になっていた男

まぁ 、当の本人は全く知らないのだが


何事も無かったかのように俺もシルクも出迎える

実際そんなに何かあった訳でもない

あの後は割と普通に編集をした


そうだな 、1 つ変わったとすれば

俺が核心に気付いたことぐらい

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