SIDE 大貴
トイレに逃げ込んだのが間違いだった。
1番最後に家で泣いた侑李を見たのはトイレだった。
『ごめっ、ごめんなさいっ...
僕、っまたいらないって....言われ、っ?』
『りび、んぐ、っ...きのうのままでっ、
こっ、、怖くてっ...っ』
頭の中で侑李の助けを求める声が響く。
あぁ、やめてくれ、もう。
思わず座り込んでしまったせいで
背中が冷たい。
なのに、目の奥は熱くて痛い。
自分の袖に涙が滲むのが悔しくて
また痛くて、熱くて。
侑李があんな酷い目にあっていたことを
「当たり前だ」と思う環境にさせてしまった。
俺が声をあげていれば
親に対抗していれば
何か変わったかもしれない。
この場所はおかしいと
侑李がもっとはやく思えたかもしれない。
そうすればもっとはやく
助けを求めてくれたかもしれない。
"求めてくれたかもしれない"?
なに侑李のせいにしてんだよ。
侑李は悪くないだろ。
俺が、俺が助けなかっただけだろ。
ーわかってたのに、あの日見ないフリをしたのは…ー
なのに、なんで俺が泣いてんだよ。
泣きたいのは侑李だろ。
悔しい。
怖い。
俺も侑李を傷つけた1人になっていたら。
嫌だ。
怖い。
違う、俺が怖がっちゃいけない、
ごめん侑李。
悔しい
悲しい
怖い
嫌だ
逃げたい
助けたい
辛い
やめて
聞きたくない
怖い
怖い
怖い
怖い
ーーーーーーーーもう、わかんない………
喉が呼吸を拒否しそうになった瞬間、
ドアの外から
天使のような優しい声が
俺の頭の黒い雲の隙間から、優しく光を溢した。
SIDE 慧
なんて声をかけようか。
大丈夫?
いや、大丈夫なんて
あの頃の俺たちはそんな言葉大っ嫌いだった。
同じ思いはさせたくない。
行ってみれば、
トイレから啜り泣くような声は聞こえるのに
光は漏れていなかった。
暗い中、耐えてるんだな、、、。
怖いよな、、、。
そう思って口をついたのが"暗くない?"だった。
鍵を開けてくれるきっかけになるように
あえてどうでもいいことを話してみる。
中からは、引き攣るような呼吸音がかすかに聞こえる。
苦しくなっちゃったかな。
余計出づらいかぁ…
ストレートに言ってみた。
どんな声掛けをしたらいいかなんてわからないから
やぶひか兄さんならどうするかなって。
きっと、すごく優しい春のようなあの声で
ふんわりと暖かい風を送ってくれるんだ。
できるだけ、あの香りを纏わせるように優しく。
数秒の沈黙のあと、かちゃ…と控えめな音が響いた。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。