全力ダッシュ、泳ぎ、猪とのデスマッチを経た次の日。
玲那の足取りは、さすがにちょっとだけ重い。
朝の訓練を終え、木陰に腰を下ろした玲那の肩は、
汗でびしょびしょ。
息も絶え絶えで、顔が赤い。
その時。
影がふわりとかかって、
差し出されたのは冷たい水の入った小瓶。
玲那は言葉に詰まりながら、
その水を一気に飲み干す。
でもその声は、どこか優しかった。
訓練後、謙杜に案内されたのは古びた魔法教室。
天井が高く、壁には魔法陣のような装飾。
本棚にはびっしりと魔導書やスクロールが詰まっていた。
玲那は机に座り、謙杜は向かいの椅子に腰掛ける。
彼が取り出した本には、
異世界の文字と光のような図形が描かれていた。
パラッとページをめくる手はスムーズで静か。
謙杜の声は柔らかく、でもどこか突き刺さる。
玲那は少し目を丸くしてから、微笑んだ。
授業の終盤、ふと玲那の目が棚の奥に向いた。
長尾がちらりと視線を向ける。
玲那は、そっと木製の美しい弓を持ち上げた。
意外にも、手にしっくりとくる重みだった。
一瞬だけ、謙杜の目が細くなった。
玲那はまだ知らない。
この弓を手にしたことで、
自分の未来が大きく変わることを――














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。