月が高く昇ったころ。
訓練所の裏手、中庭にひっそり佇む1人の少女──玲那。
昼の出来事がずっと頭から離れない。
胸がざわつく。
意味も分からない感情が心を締めつける。
──その時。
静かな声とともに、風が揺れる。
振り向くと、そこには大橋。
手をポケットに入れて、いつものように気楽な足取り。
だけど──目は笑っていなかった。
大橋はそのまま、隣に腰を下ろす。
しばらく、ふたりの間に沈黙が落ちる。
虫の鳴き声と、遠くの水音だけが響いている。
少し沈黙が降りたあと。
目を見開く玲那。
けれど、大橋は目をそらして続ける
ふっと笑う大橋。けれどその笑顔は、どこか苦しくて。
玲那を見て、ちゃんと目を合わせる。
玲那がそう呟くと、
大橋はふっと優しく笑って、立ち上がる
手を軽く振って、背を向けて歩き出す大橋。
その背中は、どこか寂しげだった。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。