三葉と真斗が付き合うシーンだけ
変えることが出来た。
ここだけ。それはどうして。
三葉がフラれた場所で一人考える。
漫画では、ここで三葉は『幸せ』になった。
それまでの苦しさは、涙は何だったんだ?
そんなんで昇華される程度のもんだったのか?
違うだろ。
一度味わった孤独の辛さは、
時を経ても鮮明に思い出せる。
それはきっと、誰かと一緒に居たって
消えることはない。
なぁ、そうだろ黒月。
いじめられた傷は、
ひとりぼっちになった記憶は、
どんなことがあっても癒されない。
心の奥深くに刻まれて、
一生消えないものになる。
『ナチュラルデイズ』は
俺の絆創膏になるはずだったんだ。
傷を消せないとしても、
痛まないように覆ってくれる、
そんな作品に。
だけど
『ナチュラルデイズ』は俺の傷を抉った。
俺はもらえなかったものを、
真斗はもらってる。
あいつは俺と同じはずなのに、
俺も同じことをしたはずなのに。
何で真斗はこの世界に受け入れられてるんだ。
こんなくそみたいな世界、価値なんてない。
なんで。
お前もあの編集者とおんなじかよ。
こんなくそみたいな作品を肯定するのかよ。
うるせぇ!!!
────────────
自分の過去を反映させた真斗を
幸せにするために描き始めた
『ナチュラルデイズ』。
俺が得られなかった幸せを、
俺の分身であるこいつには
せめて与えてやりたかった。
誰にも否定されず、拒まれない、
そんな幸せな世界を。
なのに真斗は俺と同じ道を歩き始める。
やめろ、そんなことしたら、
お前もひとりになっちまう。
物語の中でも、世間からも
、真斗は受け入れられた。
俺と一緒のはずなのに。
俺と同じ道を歩いたはずなのに。
何でこんなにも、違うんだ。
はっきりものを言うのは、
嫌われるんじゃねぇの?
俺と真斗の違いってなんだ?
なぁ、教えてくれよ。
同じセリフじゃねぇか。
なんで、なんでお前は……。
幸せにしてやりたかった。
真斗は過去の俺だ。
俺のような過ちを犯さず、
ただ平和で優しいだけの世界で
生きてほしかった。
なのに気付けば同じ道を歩いていて、
それなのにあいつは
明るい陽の下でみんなと一緒に居る。
俺は、俺は真っ暗な場所で
ひとりぼっちなのに。
俺に、作品に向けられる声に
全部ノイズがかかって聞こえなくなっていく。
もう誰も俺なんて見てくれない。
自分の孤独を浮き彫りにしたかったのか?
自分の惨めさを再確認したかったのか?
お前の人生は間違ってたって、
指摘されたかったのか?
俺と真斗の違いはなんだ?
なんで、なんで……。
もう何も聞こえない。
真っ暗な世界で、
ノイズがかかったこの世界で、
俺はひとりぼっち。
正真正銘のひとりぼっち。
このまま誰にも認められないまま、
誰にも認識されないまま、
消えていくのか。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。