第28話

第二十八話
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2024/10/19 11:00 更新
折原成
折原成
(どうしたって俺が描いた漫画通りに
物語は進んでいく。なのに……)
三葉と真斗が付き合うシーンだけ
変えることが出来た。
ここだけ。それはどうして。

三葉がフラれた場所で一人考える。

漫画では、ここで三葉は『幸せ』になった。
折原成
折原成
(けど、好きな奴と付き合えただけで幸せとか、
安易すぎんだろ)
それまでの苦しさは、涙は何だったんだ?
そんなんで昇華される程度のもんだったのか?
違うだろ。
一度味わった孤独の辛さは、
時を経ても鮮明に思い出せる。
それはきっと、誰かと一緒に居たって
消えることはない。


黒月想
黒月想
お、折原!


なぁ、そうだろ黒月。
いじめられた傷は、
ひとりぼっちになった記憶は、
どんなことがあっても癒されない。
心の奥深くに刻まれて、
一生消えないものになる。

『ナチュラルデイズ』は
俺の絆創膏になるはずだったんだ。
傷を消せないとしても、
痛まないように覆ってくれる、
そんな作品に。
だけど
『ナチュラルデイズ』は俺の傷を抉った。

俺はもらえなかったものを、
真斗はもらってる。
あいつは俺と同じはずなのに、
俺も同じことをしたはずなのに。
何で真斗はこの世界に受け入れられてるんだ。

こんなくそみたいな世界、価値なんてない。
黒月想
黒月想
『ナチュラルデイズ』に罪はない!

なんで。

黒月想
黒月想
三葉はまっすぐで、
辛くても立ち上がれる強さや
人を思う優しさがある
黒月想
黒月想
真斗はちょっと無愛想だけど、
でも誰よりも嘘が嫌いで誠実で!
お前もあの編集者とおんなじかよ。

こんなくそみたいな作品を肯定するのかよ。
黒月想
黒月想
『ナチュラルデイズ』は
価値がある作品なんだよ!




うるせぇ!!!




折原成
折原成
……聞きたくねぇ、
そんなこと





────────────

自分の過去を反映させた真斗を
幸せにするために描き始めた
『ナチュラルデイズ』。
俺が得られなかった幸せを、
俺の分身であるこいつには
せめて与えてやりたかった。
誰にも否定されず、拒まれない、
そんな幸せな世界を。
編集
何も起こらない幸せな世界、
ですか……
編集
連載漫画としては
ある程度メリハリがないと
成り立たないんですよ
編集
たとえば
次のシーンでいじめとか入れてみませんか?
そしてそれを真斗が止めて……
なのに真斗は俺と同じ道を歩き始める。
やめろ、そんなことしたら、
お前もひとりになっちまう。
折原成
折原成
(……なんで、
受け入れられてんだ?)
物語の中でも、世間からも
、真斗は受け入れられた。
俺と一緒のはずなのに。
俺と同じ道を歩いたはずなのに。
何でこんなにも、違うんだ。
編集
先生、次はこんな展開どうですか?
読者からももっとかっこいい真斗が見たい
って言う要望があって……

はっきりものを言うのは、
嫌われるんじゃねぇの?

読者
先週のこのシーンの真斗のセリフ、
ほんとスカッとした!
読者
自分を曲げないのが
ほんとカッコいいよね~!

俺と真斗の違いってなんだ?
なぁ、教えてくれよ。

瀬良 真斗
瀬良 真斗
やめろよ。
みっともねぇ

同じセリフじゃねぇか。
なんで、なんでお前は……。

折原成
折原成
(真斗まで、
俺を否定すんのかよ)
幸せにしてやりたかった。
真斗は過去の俺だ。
俺のような過ちを犯さず、
ただ平和で優しいだけの世界で
生きてほしかった。

なのに気付けば同じ道を歩いていて、
それなのにあいつは
明るい陽の下でみんなと一緒に居る。



俺は、俺は真っ暗な場所で
ひとりぼっちなのに。





編集
せ……、このま…………すよ!


読者
真斗………………よか、……


読者
………ってくれて、………った!


俺に、作品に向けられる声に
全部ノイズがかかって聞こえなくなっていく。

もう誰も俺なんて見てくれない。


折原成
折原成
(何がしたかったんだ、俺は……)


自分の孤独を浮き彫りにしたかったのか?
折原成
折原成
(……ちがう)
自分の惨めさを再確認したかったのか?
折原成
折原成
(違う)
お前の人生は間違ってたって、
指摘されたかったのか?
折原成
折原成
(違う!!)


俺と真斗の違いはなんだ?


なんで、なんで……。


折原成
折原成
なんで俺だけが
ひとりだったんだ……


もう何も聞こえない。
真っ暗な世界で、
ノイズがかかったこの世界で、
俺はひとりぼっち。


正真正銘のひとりぼっち。


このまま誰にも認められないまま、
誰にも認識されないまま、
消えていくのか。
折原成
折原成
(……だれか、)








黒月想
黒月想
俺が、俺が傍にいるから!

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