ノイズがかかった世界で
ひとり取り残された俺に、
はっきりと声が聞こえてきた。
それは真斗が三葉に向けて
言ったセリフだった。
孤独に打ちひしがれそうだった
三葉を救うセリフ。
望まないくそみたいな展開の中に
俺がねじ込んだ、俺が考えたセリフ。
その言葉に導かれるように顔を上げれば、
真っ暗だった世界に一筋の光が差し込んでいた。
手をのばせば、その光を掴むことが出来る。
じんわりと全てを溶かしてくれるような
優しい感覚。
未だかつて、
こんな感覚を味わったことがあっただろうか。
……いや、あったな。
知ってる。
一度目を閉じて再度開けば、
ここが空き教室だということが分かる。
床に散らばるちぎられた紙たちの中心で、
俺は黒月に抱きしめられていた。
臆病なくせに、弱いくせに、
俺を何度も引き留めた黒月。
言葉に出来ないからか、
いっつもこうやって俺にしがみついてたっけ。
黒月が、俺を見た。
弱弱しいやつだと思っていた黒月は、
意外と目力があることに初めて気づく。
はっきりそう告げた黒月は、会話のキャッチボールが下手くそだったやつとは思えない程たくさんの言葉を紡いだ。
俺は俺しか見てなかった。
過去の俺を幸せにすることしか
考えてなかった。
だけど真斗は違う。
誰かを救えるなら
自分を犠牲にすることも厭わない。
偶然にも黒月は「花織ルラ」に
寄り添ってもらっていると感じていた。
だから、黒月は
俺に寄り添おうとしてくれた。
窓の外から聞こえてくる
楽しそうな声。
見ると、そこには
手を繋いだ三葉と真斗の姿があった。
俺が癇癪を起こして壊そうとした物語。
大嫌いだったこの世界。
この世界は過去の俺を救ってはくれなかった。
だけど、黒月を救っていた。
黒月はこの世界を、
俺の作り出した物語を愛してくれていた。
黒月の声に被さるように
ジジ、とノイズがかかる。
あぁ、もうこの世界ともおさらばだ。
不思議と、
死ではなく元の世界に戻れるのではないか
という確信があった。
なぁ黒月。
俺もう少し頑張るから。
だから、
お前ももう少し頑張って生きろよ。
俺も、お前が傍にいてくれると思えば、
もっとちゃんと現実と向き合える気がする。
だからお前も、もう少しだけ俺に……
「花織ルラ」に救われててくれ。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。