銀山温泉の旅館、雪に覆われた夜。部屋の中では、天ヶ瀬と朴オノキの対立が一触即発の空気を帯びていた。倒れたテーブルの残骸が床に散らばり、天ヶ瀬の鋭い視線と朴の反抗的な目が火花を散らす。廊下では、キズィールとスパラキシスがインカム越しに仲間たちに状況を伝えつつ、仲裁のタイミングを見計らっていた。
「おい、朴くん! いい加減にしな!!!!」天ヶ瀬の声が部屋に響く。筋肉質な体が一歩前に出ると、朴も負けじと胸を張る。「貴様こそ、いつも俺をガキ扱いしやがってよぉ!!!! もう我慢の限界だぁ!!!!」朴の声は怒りに震えていたが、その奥には何か言い知れぬ感情が滲んでいるようだった。
キズィールは廊下でインカムを握りしめ、仲間たちに実況する。「うわ、ヤバい! 朴、マジで天ヶ瀬さんに噛みついてる! テーブルひっくり返ったし、次は拳が飛びそう!」彼の明るい声には、どこか場を和ませようとする軽さが含まれていたが、目は真剣だった。
スパラキシスは渋い顔でインカムに話しかける。「お前ら、笑ってる場合じゃねえぞ。マジで誰か来い。俺とキズィールだけじゃ止めきれねえかもしれない」彼は煙草をポケットにしまい、部屋に戻る準備をしながらキズィールに囁く。「お前、さっきの話、絶対天ヶ瀬にバラすなよ。朴のプライドがズタズタになるから!!!」
「わかってるよ、スパライ尊! 俺、墓まで持ってくぜ!」キズィールはニヤリと笑い、インカムを切る。だが、その瞬間、部屋から再び大きな物音。ドン!と壁を叩く音が響き、二人は慌てて部屋に飛び込んだ。
部屋の中では、朴が天ヶ瀬の胸ぐらを掴み、天ヶ瀬がそれを冷ややかな目で受け止めていた。「朴くん、いい加減吐き出せ。君のその態度は何だ? 昔のことで...まだ根に持ってんのか?」天ヶ瀬の声は低く、だがどこか朴を試すような響きがあった。
朴は一瞬言葉に詰まる。だが、すぐに顔を歪め、声を絞り出す。「テメェ…あの時、俺のミスを庇ったくせに、毎日俺を監視して、まるで俺が無能みたいに扱ったぁ!!!! 貴様の...その上からの...目線が、クソムカつくんだよなぁ!!!!」
その言葉に、部屋の空気が凍りつく。キズィールとスパラキシスは思わず顔を見合わせる。天ヶ瀬はしばらく黙り、だがやがて口元に微かな笑みを浮かべた。「そう。僕のやり方が、君にとってそう映ったんだね......」彼の声は意外なほど静かだった。
「だがね、朴くん」天ヶ瀬は続ける。「僕は君を無能だなんて思ってない。むしろ、だからこそ厳しくした。君ならもっとやれるって、僕は信じてるから」
朴の目が揺れる。「......ざけんなテメェ。そんな言葉で誤魔化せると思うなよ?」だが、その声にはさっきまでの鋭さが少し欠けていた。
スパラキシスがすかさず割って入る。「おいおい、二人とも一旦落ち着けよ。銀山温泉の夜は長いんだ。こんな...しょうもないみっともないくっだらないバトルより、温泉入って頭冷やそうぜ」彼のオッサンらしい軽い口調に、キズィールがすかさず乗っかる。
「そうそう! 天ヶ瀬さんも朴も、湯けむりの中で語り合えば、なんか解決するって! な、インカムでみんなにも伝えとく?」
「バカ野郎! 余計なことすんなって!」朴がキズィールを睨むが、その目はどこか照れ隠しのようにも見えた。 キズィールは笑いながらインカムを手に取り、「おーい、みんな! 銀山温泉、ちょっとだけ収束の兆し! でもまだ油断できねえぞ!」と叫ぶ。
天ヶ瀬は深く息を吐き、朴から一歩下がる。「朴くん、僕のやり方が気に食わないなら、直接言わないとダメだ。これからも仕事は一緒だから、逃げないでね」
朴は「チッ......ッ!」と舌打ちし、だがその目は天ヶ瀬をまっすぐ見つめていた。
「…覚えとけよ、貴様ァ...! 次はテメェをぶっ殺す......ッ!」その言葉には、敵意と共に、どこか仲間としての火花が宿っていた。
スパラキシスが肩を叩き、「ほら、行くぞ。温泉で汗流してこい」と朴を促す。キズィールは最後にインカムで締める。「銀山温泉、ひとまずバトル終了! 次は湯けむりトークで決着だな!」
雪降る銀山温泉の夜、男たちの衝突は一時収束を迎えた。だが、朴と天ヶ瀬の間に流れる複雑な絆は、温泉の熱気のように、まだ熱くくすぶり続けていた。続きは、また別の夜、湯の中で明らかになるのかもしれない。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。