ボンバー視点より
「願いの夜」
夜が静かに公園を包み込む。
ボンバーはそっと空を漂いながら、人間たちの願いの気配を探していた。
短冊が風に揺れ、五角形の頭がふらふらと揺れている。誰かの悩みを感じ取るたびに、心がぴりりと震える。
今日は、特別強い思念を見つけた。
ベンチに座る大きな男——朴オノキ。
彼の心には、黒い渦が渦巻いている。
これは、すごく重い願いだ、とボンバーは思った。
「ボクに、願いを?」
そっと声をかける。
人間はすぐに反応しないこともあるが、彼はすぐに応えた。
「願い、ねぇ……じゃあよ、天ヶ瀬を消してくれ」
その言葉を聞いた瞬間、ボンバーはちょっぴり戸惑う。
“消す”願いは重い。
叶えれば、そのひとが本当に救われると限らない。
でも——この人は、もう限界なんだ。
「わかった。でも願いには代償がいる」
その代償を伝えるのはボンバーの掟だ。
「叶えたあと、生きるって、約束して」
これは、本当はボンバー自身の願いでもある。
誰かの“消える”願いを叶えたあとは、願った人に「生きてほしい」と願う。
その約束を交わしたとき、ボンバーの中も少しだけ安堵の色がさした。
虹色の羽衣を広げ、願いを――放つ。
夜の静けさが、朴の心の闇と重なり、消していく感覚。
瞬間、世界が静かに一度だけ“ずれる”。
「天ヶ瀬、いなくなった」
言葉を告げるとき、ボンバーは朴の表情を見つめる。
代償に向き合い“生きる”という決意を口にしたとき、
ボンバーは満足する。
「よかった、よかった! ボク、またね!」
空へ浮かびながら、ボンバーはほんのちょっとだけ、
胸の奥が温かくなるのを感じる。
願いを叶えることは、ボンバーにとって“救い”でも“責任”でもある。
呪いのような願いは、決して軽くない。
でも、それを受け止めた人間の「生きると約束する顔」を見たときだけは、
祝福の光となって、星に溶けていく。
今夜も、ひとつの願いが叶い、そして――
また誰かの明日が始まる。
——(了)







![ホワイトテール[White Tale]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/6afbf9b5a8ce3b111dd33193558bc489c1474345/cover/01HX1F8P1N1G2CDD7CZF3H55MB_resized_240x340.jpg)




編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。