あれだけ私の恨みを買っていた上鳴くんは、あまりにも呆気ない負け方をしていた。
あんな負け方では、あまりにもよわっチョロく見える。
本戦で初めに戦うのは、三奈ちゃんだ。
彼女の”個性”は酸、互いに近接戦闘がメインだが武器無しである以上、素手での打撃以外に攻撃手段を持たない私はなかなか苦しい戦いである。
酸を受けながらでも突っ込んでいき、押し出すのが現実的か。
でも、化学熱傷は跡が残るのだろうか。
火傷は残らないはずだから、よほど問題ないとは思うが、保険をかけるに越したことは無い。
……一体、どうしたものか。
そんなことを考えながら、ステージ上へ向かった。
その合図とともに、ステージの地面を思いっきり殴る。
途端に砂ぼこりが舞い、視界が悪くなった。
ただ真っ直ぐ突っ込んで行くだけでは、身体能力の高い三奈ちゃんにかなわないだろう。
だから私は、距離を取る。
超音波を発して三奈ちゃんの位置を把握しつつ、割れた地面の大きな破片を抱え、少しずつ細かく砕きながら移動をする。
道徳倫理は捨て置け、と言われたがそうもいかず、小さく謝ってからその破片たちをまとめて全部投げつける。
石を投げるのはヒーロー志望として気が引けるが、これも戦略のうち。
酸を受けずに試合を終わらせられそうな作戦が、これしか考えつかなかった。
突然の投石に驚き酸を出した三奈ちゃんの背後に回り、背中を押す。
思ったとおりに端へ追い込めていて良かった。
睡さんのそんなジャッジが響き、1回戦が終わった。
大きな拍手がスタジアム中に響く中、三奈ちゃんに向かってお辞儀をし、ステージを後にした。
2回戦の相手は、常闇くんらしい。
次も、なかなか手ごわそうだ。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!