ふと目を覚ませば、黒い風呂敷包が目の前に置いてあった。
どうやらあなたの下の名前からの弁当らしい。
寝ていらっしゃったので置いておきます。
お暇な時間に食べてください。———あなたの下の名前
そう書かれたメモが添えられている。
高校の入学祝で渡した、クジラのメモ用紙だ。
食べようと弁当箱を開ければ、可愛らしい弁当だった。
キャラ弁と言うやつだろう。
稲荷で猫が模られている。
30近いおじさんが、こんなにかわいいものを食べてもいいのだろうか。
そう考えながらも、娘の成長を感じ微笑ましくなる。
いつの間にかこんなことができるようになって……。
弁当を写真に残そうとカメラを向けていれば、やかましい奴が帰っていた。
ずい、と寄ってきたのを押し返し、もう一度弁当にカメラを向ける。
スマホをしまいながら手を合わせて箸を進める。
まったく、子どもというのは知らないうちにこうも大きくなっていくのか。
いつの間にか自身よりも背の高くなった娘の顔を思い浮かべながら、弁当を食べ終えた。
この体育祭が終わったら、お礼を伝えるついでに会いに行こうか。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。