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第47話

嵐
77
2026/10/21 03:00 更新
案内通りに控室へ入り、壁に寄せてあったベンチに腰掛ける。

……頭痛い。

一次試験中、強めの音波を出し続けていたせいか、頭が疲れている。少しでも頭を休めようと、顔を伏せていれば、大きな声が降ってきた。
夜嵐イナサ
あの!雄英のクジラの人!
あなた
あ、士傑の……お名前なんでしたっけ、すみません
夜嵐イナサ
夜嵐イナサッス!
あなた
あー……えっと、相澤あなたの下の名前、です
声が大きい。
いきなりなんだろうか。私にかまっていないで、休んだらどうだろうか。

いや、どうみても元気が有り余っていますが。
夜嵐イナサ
体育祭観ました!熱かったッスね!
体育祭。よりにもよってその話題を。
できれば出して欲しくない話題だが、まぁ。

雄英生である以上、必然ですかね。

切り上げる方法も浮かばない上、人脈を広げて損はないらしいから、大人しく話に応じる。
あなた
ど、どうも
あなた
その、それでなにか……?
まさか、まだコネ発言が尾を引いて……いやいや、体育祭優勝者とはいえ、あんなのただの高校生の戯言にすぎない。きっと——
夜嵐イナサ
結局コネなんスか?
やっぱり……素直に嫌なところへ踏み込んでくる。
あなた
……あの試合中にも言いましたが、そんなことありません
あなた
大体、コネで入るような人間が雄英(うち)でやっていけるわけがないでしょう
大丈夫、大丈夫。
なにも怖くない。間違っていない。
夜嵐イナサ
ですよね!オレもそう思ってたッス!
……良かった。誤解はされていないようだ。
あなた
それはどうも、ありがとうございます
一応、お礼を伝えておく。
誤解されていないのなら、本当に良かった。まぁ、メディアでもゴタゴタ言われていた記憶がないし、きっと世間的にもほとんど覚えていないようなことなのだろう。
夜嵐イナサ
あなたの下の名前さん意外と勇ましいッスね!
勇ましい……あ、そうだ。
あなた
“個性”のせいですかね
あなた
万葉集において、クジラは勇ましい魚と書いて“勇魚(いさな)”と読むらしいですから
数年前に読んだ本の内容を思い出しながら、口にする。
私も、勇ましくありたい。
夜嵐イナサ
初耳ッス!かっこいいっスね!
一際大きな声を出されて、少しだけ背を反らした。
夜嵐イナサ
じゃ!
あなた
えっあ、はい!
また誰かを見つけたのか、突然さっさと他の場所へ移動する夜嵐くんの背中を見送った。
名は体を表す、と言うが、まさにその名の通り嵐のような人だった。

ほんの少ーしだけ、嫌な嵐を残されてしまいましたね。

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