緑谷くんの発言から、お父さんを手助けする隙を探る。
正直なところ、今すぐにでも突っ込んで行きたいが、それで足手まといになっては元も子もない。
それでも、とにかく不安で、「助けさせてほしい」なんて気持ちが湧いて仕方がない。
手をかたどったようなものを纏っている親玉と思われる敵が、お父さんに触れる。
その瞬間に肘が崩れて、痛々しく筋肉が露になる。
……は?
お父さんが飛び出してからずっとばくばく鳴ってうるさい心臓が、さらにうるさくなった。
そんなこと、あっていいわけがないでしょう。
思うと同時に、無意識的に体が動きそうになる。
それを、梅雨ちゃんに止められた。
でも、でもお父さんが。
お父さんが怪我を。
そんな気持ちがぐるぐるして、頭が回らない。
次に出す言葉も出てこない。
普段のあなたなら、振り払えるはずよ。
そう言われて、ようやっと気が付いた。頭蓋が痛み、呼吸が弾んでいることに。
きっと、船に上がる前に水中で行っていた索敵と応戦が効いている。
でも、助けないと。
そう思った瞬間に、手の敵の背後から図体の大きい何かが現れ、お父さんを拘束した。
———腕が。
そう思った瞬間には、もう梅雨ちゃんを振り払っていた。
ああ、どうしてでしょうか。
これほど消耗しているのに、どうして動けるのでしょうか。
どうして世界が遅く見えるのでしょうか。
攻撃用ロッドを伸ばし、大きく振りかぶる。
……今なら、やれる気がした。
今なら、どうなってもいいと思った。
なんの恐れも、感じなかった。
立派な攻撃になる最大音量の音波をその大きな敵にぶつけて瞬間的に意識を失わせ、そのままの勢いで思いっきり打つ。
それがこの技だ。
いつか、完成させたいと思っていた、ザトウクジラの狩り由来の技———私が今考え得る最大限の大技だ。
……それなのに。
何らかの力で音波を防いだか、敵が意識を失うことは無く私の攻撃を軽々と片手で止められた。
そう思った時にはもう遅い、ロッドから手を放すほどの間もなくまとめて吹っ飛ばされた。
吹っ飛ばされたことを認識したとほぼ同時に、全身に強い衝撃が走る。
相当な距離を飛ばされたようだ。
頭蓋が痛み、手足は痺れ、激しい吐き気とめまいに襲われる。
でも、まだ、動ける。
そう思ったのに、視界がかすみ、眠気がくる。
やめろ、気を失うな、動け、動けるはずだ。動いてくれよ。
———そこで私は、意識を手放した。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。