ここは……?
お父さんは……?
視界の隅に映った点滴や、トラバーチンの天井から推測するに、ここは病院らしい。
お父さんの声がして、首を回せば、隣のベッドでお父さんが寝ていた。
全身包帯まみれで、少し心が痛んだ。
掠れる声でそういえば、馬鹿、と少し怒気を含んだ声で言われる。
回復したらまた、怒られそうだ。
でも、怒れるくらいお父さんが元気なら、それでいい。
試しに、そう訊いてみる。
返ってきた声は、先程の様な怒気を含んでいない。
今は、怒っていないんですか……?
そう思って尋ねる。
その、”大怪我”という言葉に、自身へ目を向ければ、私も包帯がまかれていた。
思っている以上の、大怪我である。
まさか、これほどまでの怪我をしているとは。
それほど、無茶をしてしまったという事か。
そりゃあ、怒る意味も解ります。
恐る恐る訊いてみる。
2、3週間……なかなかかかりますね。
それにしても、全身打撲に肋を骨折とは、よく生きてましたね私。
あのとき感じた痛みの大きさからリカバリーガールの治癒を受ければすぐに復帰できる程度かと思っていたが、思い返してみればあの時は危機的状況でエンドルフィンか何かが出ていたのかもしれない。
人間の機能も、困ったものである。
怪我を自覚できないなんて、時にはさらに危機的状況にさらされる。
そう何度もしてたまるか、死ぬぞ。
なんて言われて、たしかにそうですね、と返す。
街やニュースで見かけるヒーローは、再起に時間がかかるような怪我はそうそうしていない。
誰かを護る、と言いたいのなら、自身が怪我をしてはいけないのかもしれない。
ヒーローは怪我をしないからそう名乗ることができるのかもしれない。
そんなことを、考えた。
そう、入試までの間、ずっとずっとできなかった攻撃が、初めてできたのだ。
長い間、扱い方を共に考え教えてくれたお父さんに、真っ先に伝えたかった。
……本当は、そんな立派な理由もなく、ただただ親に自身の”できる”を見せたい子どもみたいな欲求だが。
そんなことを話しながら一晩だけ入院し、注意事項を伝えられた後にお父さんとセットで教師寮へ帰らされた。
強い痛みが無くなるまでの数週間は、教師寮で生活させてもらえるらしい。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!