太陽が容赦なく僕らを照らす
爽やかな空には似合わない程蒸し暑くて、少しだけ見える海が待ち遠しかった
踏み切りの目の前で止まって、気づけばそう溢していた
君に出会う前の僕が毎日の様に考えていたこの場所で
初兎ちゃんに電車が好きなのかと聞かれる
そんなに明るい気持ちじゃなかった
一歩間違えれば透明にさせられる鉄の塊
僕は電車が去った線路を踏み付け、走り抜けた
何か考えていたのか、僕に気づかず止まっていた
君は少し笑い、僕の元へ駆けて来る
そう言ってすぐ、僕も君も泳ぎ始める
初兎ちゃんは僕よりずっと早く止まって
砂浜で、風に仰がれていた
その言葉には肯定も否定も似合わなくて、僕はただ笑って見せた
馬鹿だなぁ
取り繕った僕に騙されて
他の人間なんて友達でも何でもない
僕にも、君だけなのに
疲れ切った君の前で海に入る
少しして、君も僕の元へ来た
乱れた息は整っていないけど
当然、僕も初兎ちゃんにやり返される
楽しそうに「ボーッとしてるから」と言って来た
バシャバシャと全身が濡れて行く
2人きりみたいな世界で、僕も君も楽しく笑った
砂浜に寝転び、暗くなっていく空を見ながらそう言った
寂しさで自然と声音が落ち着いて行く
君と過ごす時間が楽しくて、すっかり忘れてしまっていた
君も僕が好きで良かった
これで、もう少し一緒にいる事が出来る
少し遅かったから振り返ると、君は幸せそうに笑っていた
きっと、僕も笑っているんだろうな
初兎ちゃんに買って貰ったアイスを口に入れる
悩みに悩んで、結局初兎ちゃんに選んで貰った
空みたいなソーダのアイスだ
2人して早く食べすぎていたらしい
そんな事ですら君と一緒なら面白くて楽しくて、また笑った
まだ居たいと言う心を無視して足を動かす
いつまでも2人きりで、こうやって笑い合えたら良いのに
僕は名前すら覚えていない病気を、初めて憎らしく思った
永遠に君を独り占めする事が出来ないんだ
僕が死んだら、僕だけの君にする事が出来ないんだ
人間の脳は過去の友達くらい、きっと簡単に薄めてしまうから
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。