第34話

大切な物
3,899
2022/06/08 13:15
道枝side


長尾がいなくなってからもう3ヶ月。

俺らのデビュー日が近づいてきている。

無事アリーナツアーも成功。


道枝「恭平、」

道枝「もうそろそろ終わりにしよう」

高橋「そうやな、」


何を終わりにするのか、それは。


長尾のことを引きずること。


長尾がいなくなってからずっとみんなは

まだどこかに長尾がいるとして生活してきた。


スーパーに行っても、


大橋「これ謙杜好きやったよな?」

西畑「あー好き言ってた」

大橋「じゃあ買ってこっと」



本屋さんでも


大西「これ謙杜が読んでた漫画の続編!」

高橋「ほんまや!」

大西「謙杜に買ってこ!」

高橋「うん!」



謙杜はもういないってみんな知ってるのに


まだ謙杜はこの世界にいるんだってみんな信じてる



道枝「謙杜も困ってるよね、笑」

道枝「俺らがこんなんやから謙杜空でも自由に出来てへんかも、」

高橋「そうやな、笑」

高橋「最年少に気いつかわせてんな、」

道枝「デビューもするし一旦‥」

高橋「‥」


長尾のことを頭の隅に置いておこう。


道枝「やっぱできないかも、」

道枝「やっぱ‥」

道枝「長尾がいないって思って生きてくのは怖い」

道枝「きっとおじいちゃんになったらみんなのこと自然と忘れてくのかもやけど‥」


俺って本当最低やと思う。


長尾のことあんなに傷つけたのに今更長尾のこと

忘れるなんて出来ないって


長尾が生きてる時にそうなんで言えんかったんやろ


道枝「なんで、」


気づいたら目から涙が溢れてた。


高橋「みっちー、泣かんといてや」


そういう恭平の目にも涙が‥




















______






雨が降っていた。


大雨。


まるで空にいる長尾が泣いてるからのように。


今日はみんなでお仕事の日。


デビュー前だからみんなで仕事をすることが

多くなった。


道枝「ちょっと外行ってくるね」


藤原「外めっちゃ雨降ってるで?」


道枝「雨を見たいの」


大橋「だったら窓からみたらええやん」


道枝「あ、そっか笑」


大西「もうみっちー笑」




早く長尾のところ行きたいな、


それでちゃんと謝りたい。


そんなことを思ってたら俺の足はいつのまにか


屋上に向かっていた。

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