第3話

6
2024/03/19 12:44
6年生になる頃には私は少し成長していた

自分から進んで代表委員になった
友達の輪にも毎回ではないが
自分で入れるようになってきた
色んなことに参加するようになった  
それが出来たのも、何があれば話を聞いてくれて
手を差し伸べてくれる萩野がいたからだ
萩野がいなくても、楽しいと思えることが増えたけれど
近くにいないと物足りないと思うようにもなっていた


小学校6年の秋のことだった
ある日、友達と好きな子の話になった

ようやく、人と関わることを慣れてきた私は
恋愛感情なんてよくわからなかったが
楽しそうに好きな人の話をする友達を見ていると
少し羨ましく思えた

話の中で
友達から萩野のことを問われて
それなら、私は萩野ことが好きなんだと思った


でも、私は「好き」という意味を
ちゃんとは理解出来てはいなかった



時が経ち、小学校最後の
バレンタインが近づいた 

当時バレンタインは日曜日
だから、確か次の日
2月15日だったはず  
私は友達に促され、背中を押され、協力してもらって
萩野にチョコを渡すことにした

でも、渡すのが精一杯で
好きとか何も言えなかった 

それから·····変わってしまった


次の日から
私は萩野と話さなくなった
いや、萩野が私と話さなくなった

話しかけてもすぐに何処かに行ってしまった
 
何故かは、わからなかった
ただとても悲しかった

その後、私は友達からバレンタインで
チョコ渡す意味を教えてもらい、やっと理解した

私は彼女になりたいとか思っていなかった   
どう表したらいいのだろう
友達として好きって感覚が一番当てはまるかもしれない
ただ、いつも通り話せる
そんな日々が続けば良いと思っていた

でも、萩野は違った
ちゃんと恋愛というものを理解していた 
その上での判断だったのだろう

今、思う
あの時どうすれば正解だったのか
チョコなんて、渡さなければよかったのか
ちゃんと、好きと言えたら良かったのか
萩野の想いをちゃんと聞きに行けばよかったのか


ただ、わかっていること

かたちはどうであれ、好きと伝えたらもう友達にも戻れない


たった1つの間違いで、私は大切なモノを失った 
失って、私は本当の気持ちに気づいた
人のこと思って、失って、傷付いて、悲しくて泣いたのは
この時が最初で最大だった


·····本当に好きだった  


あの日、最終的に渡すと決めたのは私
だから、誰かのことも責めることも、恨むこと出来ない

ただ
こんなことなら、ちゃんと好きと伝えて
ちゃんと振られればよかった····

その後悔だけが今でも残る

何もかも中途半端なまま
私はこのまま高校まで、この恋を引きずっていく

それが私の初恋だった



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