いつだったかな
何かから逃げるこの感覚…覚えがある
どうして私は造られたのか…
なんでこんな感情を持っているのか
分かってる
分かっているのに…それなのに…
気持ちが分かってくれない
私は666人目の「ワタシ」
あの時彼を殺したのはワタシ
私じゃないのにワタシなのだ
これは凄く複雑で、理解しようとしても頭が混乱して、上手く紐解けないこと
私じゃなくても、他人事として捉えることが出来ないことなのだ
だって、彼を殺したワタシは私と全く同じ顔で、全く同じ声で、全く同じDNA
お父さんは死んだ
ゴミ拾いをしたあの日、見たことない男の人に言われて初めて知った
それが本当である確証は無い
でも、嘘であるという証明にはならない
1番憎くて1番嫌いな存在
恨んでいる
生きていて欲しくない
それでも
もし本当に死んでいるならば状況は最悪だ
この心臓に埋め込まれたメタルについて1番詳しいのはお父さんだから
それが何を意味するのか
なんでわかってしまうんだろう
建物の間に入り、僅かな雨避けの下に座る
痣を隠すために着た長袖を捲れば、目も当てられないくらい汚くなった皮膚が顔を出す
スカートの隙間から見える膝うえは、腕と同じ鈍色の痣がある
左腕の感覚はほぼ無い
心臓から広がった痣が全身に回るのはもう長い時間も要さない
雨が冷たいのか分からない
それくらい、私の体はもう手遅れなのだ
変な人
なんで話なんて…
あの時、上手く言いくるめられて私はこの人とカフェに入って話をすることになってしまった
咄嗟に首に触れる
触れれば感覚がある部分と無い部分がある
見えるとこにまで広がったのか…
言ってもいいか
この人とはこれきりだろうし
驚いた
まぁ、アルタートリガーに直接的に関係してたわけじゃなくて、独立していた父親が支援を受けて実験していたのだけど
ParadoxLive…どこかで聞いたことあると思ったら、アルタートリガー社が関わっていたのか
初めこそ少し驚いていたが、今は絵に描いたような笑顔だ
この人は何考えてるか分からないな
いや、分かっていなかった
目の前のことで周りが見えていなかった
みんなのことも考えず飛び出した私が悪い
私も向き合わなきゃいけない
自分とも
みんなとも
もう残された時間は僅か
このまま痣が広がれば明日生きてるかも分からない
言うんだ全部
夏準はこちらを見ると先程と変わらぬ笑顔を見せた
会場の近くの駐車場に車が止まる
失った
1番大切で1番大好きな彼
でも今はみんながいる
私は痛む心臓を押えながらみんなの所へ走った
読んでいただきありがとうございます!













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。