あの日、通報のあった家の扉を開けると鉄の匂いが立ち込めていた
息をするのを躊躇ってしまうような、そんな匂い
玄関をあがり朝日の盛れるリビングの戸を開けた
そこには希望に満ちた朝とは程遠い、そんな景色が広がっていた
少し乾いた血溜まり
鼻を刺すような血の匂い
床には顔の判別ができなくなったぐちゃぐちゃの人間の死体と、部屋の隅には男の亡骸を抱き抱える少女がいた
少女の目は虚ろで、泣き腫らしたあとがあった
ただじっとこちらを見ていた
世界に絶望して、もう希望なんてない
そんな思いがひしひしと伝わってくる
どう言葉をかけていいか、そんな事考える余裕もなかった
犯罪者は沢山見てきた
中には人の命を奪った者も
本当に彼女が2人の命を殺めたのか
はたまた真犯人は別にいるのか
男の遺体から少女を引き離した時、寂しそうに青い宝石が光を失った
瞬きを忘れた少女の瞳から沢山溢れ出す涙が、いつか青い宝石に光を戻してくれるだろうか
もちろん返答など返ってこない
少しでも自分が支えになれれば、彼女の不安を取り除いてあげられれば、無実を証明出来れば…
自分の無力さに打ちひしがれる
今は、アルタートリガー元社員からの折り返しの電話が入るまで、何も出来ない
いつも通りタバコの匂いを漂わせてプレハブに帰る
それなのに勘のいいシバケンは…
誤魔化しても面倒なことになるだろう
ずるいなぁ、シバケンは
都合が悪くなるとすぐ黙っちゃってさ
そう告げて部屋に入る
上着を脱ぐといつもよりタバコの匂いがきつく感じた
自分はそもそも他人に興味が湧かない
誰とも繋がれない
もちろんそれは今も変わっていないし、あなたちゃんだからって特別な感情がある訳でもない
それでも、本当に繋がっていないからこそ
あの子の本当の部分を知りたくて
自分と少し似たようなものを感じてもどかしい
タバコに火をつけ咥えると、全てがどうでも良くなる
それなのに何故か、頭から離れてくれない
読んでいただきありがとうございます!

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。