第92話

君に捧げる一射②
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2026/03/13 02:00 更新
「おかえりなさいませ、光様」

光が黄瀬邸に入った際、
綾瀬率いるメイドや執事たちが発した挨拶だ
大抵帰ってきた際はいつもこんな感じで、最初こそビビったけど、今はもう大分慣れた
綾瀬「お荷物お預かりします、まずは旦那様にご挨拶を」
黄瀬光
わかった、いつもありがとな
綾瀬とは、こうして話せるには話せるんだけど、周りのメイドや執事はというと…
メイド「夕陽様、お召し物のご用意ができました」
執事「夕陽様、次の会社の面会についてご相談が…」
執事「夕陽様、先方からメッセージが届いております」
ご覧の通り、みんな夕陽につきっきり。挨拶だけして、あとはみーんな夕陽の方に向かってしまう
黄瀬光
綾瀬も夕陽の世話で忙しいだろ?あとは平気だから行ってこい
綾瀬「いいえ。光様は放って置くと、勝手にどこかに行って勝手なことをしてしまうので」
黄瀬光
へいへーい…
親父と、不本意ではあるけど副社長の老人たちに軽く挨拶をしたあと、広々とした自室にいるのはあまりにも退屈だったので外の庭を歩くことにした
リトルマック
リトルマック
屋敷ん中はずーっと夕陽夕陽ってなってたな
黄瀬光
だなー…でも


黄瀬夕陽
こちらの資料については訂正点を直し次第送信します。
先方の方からの意見、全てお聞きしました。次回の会合に参加した際に要点をまとめたWordとExcelを用いた資料を作成しておきますね…
ああ、それから家庭教師の先生は誕生日なので、サプライズとしてクッキーをお送りしたいので、後ほどキッチンをお借りしたく…


黄瀬光
すごいよなー、ほんと
アレだけたくさんの執事やメイドの意見だけでなく、老人たちの意見まで対応していて…
次期代表が夕陽になって、大丈夫だろうかと不安視していた自分がいたけど…
黄瀬光
ちょっと心配し過ぎたかな……あっ
リトルマック
リトルマック
どうした相棒?
庭を歩く足を急に止めた光の視線の先には、洋風の庭が広がっていた景色とは一変して、侘び寂びの効いた和風庭園がこぢんまりと広がっていた
そしてその庭園の隅に弓道場があり、光はそれを見ていた
黄瀬光
懐かしいなー…弓道場
リトルマック
リトルマック
んだよ、お前もやってたのか?
黄瀬光
昔少しだけな、でも夕陽の方がすごく上手くて…悔しくてやめちゃったんだ
黄瀬光
親父は弓の名手でさ…現役時代は今夕陽が参加してる弓道王大会で三連覇してるすごい人なんだ
リトルマック
リトルマック
んで、お前と夕陽は親父さんに憧れて始めたと
黄瀬光
まぁそんなとこ!…ちょっとだけ見て来ようかな
和風庭園を歩き、弓道場に向かう
普段は鍵を閉めてる弓道場は今日は開いていて、中に入った瞬間聞こえた弦の音で、誰がいるのかわかった
黄瀬夕陽
………
黄瀬光
おーっす夕陽!遊びに来たぜー!
黄瀬夕陽
!!光!
光の存在を見た瞬間、弓道具一式をポイ捨てしてこっちにマッハで駆けつけてきた
黄瀬夕陽
僕に会いに来てくれたんだね!嬉しい!
黄瀬光
それもそうだけど、懐かしいなって思って
ここの景色もすごい久しぶり…定期的に顔は見せてきたけど、ここに立ち入ったことは無かったからか、新鮮な景色だ
黄瀬光
その弓道着も懐かしい…!
黄瀬夕陽
!だ、ダメだよ光…そんなにまじまじと僕を見たら…
黄瀬夕陽
興奮のあまりよだれをたらしてついうっかり光に媚薬を飲ませて僕しか見えなくしたくなっちゃうでしょ…///
リトルマック
リトルマック
さらっと恐ろしいこと言うな!?
黄瀬夕陽
…あ、なんだ…マックもいたんだ…ぺっ。
リトルマック
リトルマック
あぁ!?💢
黄瀬光
そんなことより
リトルマック
リトルマック
そんなこと!?
黄瀬光
夕陽、弓の調子は…えっ
最奥に設置された的を見ると、二本ほど的を外して壁に突き刺さった矢が
黄瀬光
…夕陽が…外した…?
リトルマック
リトルマック
あ?あんな遠くにあるんだ2〜3本外してても変じゃねーだろ
黄瀬光
そうじゃないんだよマック…夕陽の弓は、外したところを見たことが無いんだよ
リトルマック
リトルマック
んだよそれ…マジで百発百中ってやつか?
そう、百発百中なのだ。
夕陽は、まるで吸い寄せられるかのように確実に的に矢を当てるのだ
どこまでも正確で、どこまでも冷静で…どこまでも人とは違う機械的なやり方
そんな夕陽が外すなんて、槍の雨でも降るのかと思うくらい驚きを隠せない
黄瀬光
どうしたんだ?何か悩みでもあるなら兄ちゃん…
黄瀬夕陽
…ちょっと調子悪いだけだよ。早気はやけにでもなっちゃったのかな…あはは
黄瀬光
…でも…
黄瀬夕陽
大丈夫、気にしないで。僕なら本当にすぐなんとかするから
黄瀬夕陽
光もわかるでしょ?僕がなんでもできるってこと
黄瀬光
……うん
…杞憂…なのかもしれないな
夕陽は一人でなんでも出来ちゃうから、きっと誰かに相談とかもしてるんだと思うし…いざとなれば、側近の葛西とか黄瀬の執事やメイドたちが聞いてくれるかもだし…
黄瀬光
…わかった、夕陽のこと信じるよ
黄瀬夕陽
うん、ありがとう
本当は、大丈夫じゃ無い。
的を狙おうとした瞬間、あの時の光景が目に浮かんできて、スランプに陥ってるなんて…
黄瀬の名を背負う者としてこれ以上情けない姿を見せては行けない…誰にも頼っちゃいけない…何事も完璧にこなさなくては…!
夕食をかなり厳しいテーブルマナーを守りながら済ませた後、急に老人たちに呼ばれた
黄瀬夕陽
ごきげんよう、おじいさま
黄瀬光
…ごきげんよう、じいさん
副社長「挨拶は丁寧になったが、口調は相変わらずだな…まぁいい…話というのはお前のことでな」
そう言い出すと、目の前に出されたのは複数の用紙に赤ペンでなにか書かれたものだ
だけどそれは…夕陽のテスト用紙だった
黄瀬夕陽
!?なんでそれを…誰にも見せないでくださいって…
副社長「君の意思を問わずに回収してもらうように頼んでな…見ろこの結果を」
黄瀬光
…平均…80点…
そんな…これ…
黄瀬光
普通に良くね?
リトルマック
リトルマック
ズコーッ!?
副社長「こほん…夕陽は学年上位に常に立ってもらわなくては、黄瀬の名に傷がつく。だというのにお前は夕陽をたぶらかしてゲーム部に入れたらしいな?」
黄瀬夕陽
!誤解ですおじいさま!!光は何も悪く無い!!僕が自主的に…
副社長「何も無い空っぽの分際でよくもまぁここまで落としてくれたものだ…」
副社長「…選べ。お前が学園を辞めるか、お前の弟が学園を辞めるか」
黄瀬夕陽
!!
僕か光が…学園を辞める…?
そんなのどっちも選べるわけない!!なんでそんな酷いことを…
黄瀬光
納得いかない、一度そうなっただけだろ?次失敗しなきゃいいだけなのに、俺たちの自由は無いのかよ
黄瀬夕陽
副社長「夕陽はこれから次代の代表を担う役目を持つ選ばれた人間…選ばれた人間は選ばれた上のもの達によって大切に扱われるべきだ。だがな光、お前は違う」
おじいさまの目つきが一層鋭くなって、光を睨みつける
副社長「お前はな、悪だ。我ら黄瀬にあだなす滅ぼされるべき邪悪だ。何をしても結果を生み出すことができなかった何も持たない人間風情が、自由を得られるとでも?思い上がるのも甚だしい…!」
綾瀬「…っ…!」
エミヤ「待て、美遊」
綾瀬「しかし…!」
エミヤ「これは光の問答だ。光がどういう答えを出すのか、ここで見守りたい」
副社長「貴様のような悪から夕陽を守ることこそが、我らにとっての…」
副社長「正義だ!」
黄瀬夕陽
…正義…
いけない…光がまた傷ついちゃう…悲しんじゃう…


黄瀬光
正義なんざクソ喰らえだ!!!


ダメ…光はまだ、弱い人間だ
僕でさえおじいさまに押し潰されそうになってるのに、光じゃ…
その時、ダン!と音を立てて、光が一歩踏み出した
アレだけの言葉を、否定を、ものともせず
黄瀬光
ほんとくだらない正義…
副社長「何…!」
黄瀬光
選ばれた人間でも、黄瀬の名を背負う者でも無い…夕陽は夕陽だ…俺の大切な弟だ…アンタたちの都合のいいおもちゃじゃ無い
黄瀬光
たかだかテストの点数がダメだっただけだろ?次の全国弓道王に輝けば良いだけだろ、夕陽なら余裕で取れるさ!
黄瀬光
優勝して、夕陽は星空学園ゲーム部に残る
そんで俺はアンタたちの邪悪らしく好き放題してゲーム部に残る…そんだけのことだろ
黄瀬光
そこに正義なんて言葉、必要あるかよ
黄瀬夕陽
…!
光は…光は抗うの?
おじいさまの理不尽に、否定する言葉に…荒波のような正義に…
副社長「っ…やはりお前は、正義の鉄槌を下すべきだな…!ゴミめ!」
黄瀬光
うるせえ!正義なんて言葉簡単に振り回すクソジジイに言われたくねえ!!
副社長「く、クソジジ…!?」
黄瀬光
…賭けをしよう。夕陽が弓道王になったら、アンタの要求は全部拒否…その代わり賭けに負けたら…
黄瀬光
俺が星空学園を辞める
黄瀬夕陽
!?
副社長「ほう…面白い…受けようじゃないかその賭け…生意気を言うようになった者だなあの泣き虫が…」
黄瀬光
…へっ!話は終わりだ…じゃあなじいさん
堂々と立ち去る光の姿は、まるで悪役で、正義のヒーローみたいだった。
あの時見た、全てに絶望して泣きながら怒りを叫んでいた光は、もうどこにもなかったんだ…
黄瀬夕陽
…なのに…僕は…?
わからない…光に出来ることは、僕にもできて当然なはず…なのになんで…なんでいつも光は

僕の持ってないものを持ってるの…?


黄瀬光
………………
綾瀬「光さま…」
エミヤ「光…」
黄瀬光
…………どうしよこれ^^;
リトルマック
リトルマック
………………は?

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