黄瀬邸にある私有の弓道場…そこでは今日も夕陽が一人立って、自身の向かい側の奥にある的を睨みつけていた
うん、とひと頷きしたあと…足幅を整え、弓矢を構え、弦を引き絞る…
引き絞った弓が揺れひとつない状態にまで落ち着かせ、後は目の前の的に向かって矢を放つだけ…
しかし
グサッ!!!
落ち着くことなく、ブレが生じた矢はそのまま的より外側に着地する
「夕陽」
白い髪に褐色肌の男性…お父さんが弓道場の玄関から上がってきた
慌てた僕は弓矢を床に置き、乱れ無く整えてからお父さんに近づく
エミヤ「今日は珍しく外したようだな…何か悩み事でもあるのか?困ってることがあるなら私に…」
副社長「なんだね夕陽くん、この点数は」
平均点80点後半のテスト用紙を見たおじいさまたちが、やや怒り気味にこちらに言ってきた
副社長「君が星空学園に行っても常に学年トップ層に居続けると約束したから、我々は君の星空学園転校を許可したのだよ?」
副社長「特進科という将来有望な場所への転科を断ってきたと聞いた時から、気が緩んでないかね?君は代表の意志を継いで黄瀬グループ代表になる"選ばれた人間"だと言うことをもっと自覚したらどうだ」
こうなった時のおじいさまたちは怖い
幼少の頃も一度、こうして怒鳴られたことがある
絶対に逆らってはいけないという本能的ななにかが、僕の体を締め付けてるようで…息苦しくなる
副社長「…はぁ…これも全て、あの出来損ないの兄のせいか…全くアレはどこまで我らの顔に泥を…」
副社長「ちが?なんだね?言ってみなさい」
エミヤ「…全くあの方々は…オレが何度言っても…」
エミヤ「!いや…私からあの人たちに…」
もうこれ以上、お父さんに迷惑がかからないように…これ以上、お兄ちゃんが酷く言われないように…
僕がなるんだ…あの日テレビで見たような…誰でもどんな時でも救える…
正義の味方に…
後日、ゲーム部部室
テストを終えた赤点勢はというと…
かなり堕落していた
6月も後半になり、学園に来る生徒はみんな夏服に衣替えしていた
去年は設備があまりなかったゲーム部の部室も、今年はクーラーの導入が施されており…現在に至る
ということで、急遽部内会議が始まった
全員ピクリと動いた
光がゲムデウスの器…?
各々、覚悟は決まったらしい…
「このまま本戦に出る」
その決意を、全員示してきた
一人、上の空な人がいた
全国弓道王大会…それは、中学生から大人までの年齢層で繰り広げられる熾烈な戦い
夕陽は中学から参戦し、去年優勝を果たしたとか
…そう
できるかどうかじゃない、出来なきゃいけないんだ
黄瀬グループの次期代表として、もうこれ以上失敗は許されない…
全ては、黄瀬のために
少し急ぎ気味で帰っていく夕陽を見送るゲーム部たち
「お前はもう黄瀬に必要ない…もう何もするな」
黄瀬のために全てを尽くす…それこそが正義だとか大口叩きやがってとつくづく思う
その正義とやらで何もするなと言われる人の身にもなれってんだ
あー本当正義なんてクソ喰らえだー!
家庭教師を終えた夕陽は、再び弓道場へと足を運び練習をしていたが…















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。