図書室に来てから数分。本を探しているのか図書室を観察しているのかはわからないが、図書室に来るなりすっかり捜査モードに入っていたあなたの名字が自分の名前を呼んだ。かくいう自分自身もなんだか本を読む気にもなれず、なんとなく背表紙を見ながら歩き回っていただけだったのだが。
声のした方を振り返るとあなたの名字が小さく手招きしている。何かを見つけたのか、と小走りであなたの名字の元へ行けば、あなたの名字はある本棚を指差した。
あなたの名字が差した本棚を観察して、ああ、と合点がいった。これはつまり、あれなのだろう。昨日の夜、自室で見たあのマップ。あの変な空間はきっとここのことだったのだ。
自分がそう呟けば、あなたの名字は無言で頷いた。彼女が本棚に手をかけると、それは派手な音を立てて動く。現れたのはやはり、白と黒に塗られた悪趣味なそれだった。
あなたの名字は全て言い終わる前にはっとした表情で本棚を戻す。全て元通りになった瞬間、図書室の扉が開く音がした。
先に声をあげたのはあちらだった。
やはりというか何というか、彼女達も昨日と同じように2人で行動しているらしい。朝のこともあり少し彼女が……赤松が気にかかったが、表情を見る限り恐らくは大丈夫だろう。
それにしてもあなたの名字は、彼女達の足音に気がついたのか。優れた聴力だと関心せざるを得ない。
赤松が何か言おうと口を開くが、それよりも先にあなたの名字が喋る。
と言うや否や、あなたの名字は赤松と最原を一瞥しすぐに図書室から出ていく。慌ててあなたの名字の背中を追うように図書室から出て行こうとすると「天海くん、」と最原に呼び止められた。
何故か言い淀む最原に笑顔を返せば、ごめん、なんでもない、と何故か目線を逸らされる。
もしかしたら最原は、あの隠し扉の存在を_そこまで考えて、やめた。最原だって超高校級の探偵なのだ。彼が知っていようと自分には関係の無いことだ。
それじゃあ、と短い挨拶を残して図書室を出た。既に階段を登っている彼女を見て、何だか自分は追いかけてばかりだなあと苦笑いをこぼした。









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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!