第30話

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2024/12/17 23:00 更新
王馬小吉
王馬小吉
それにしてもあなたの名字ちゃんのそれ、俺とオソロイじゃない?俺リスペクトだったりする?にしし、うれしーな!あっ、もしかしてもしかして、俺の部下?ごめんね〜、流石に1万人以上の構成員全員のことは覚えてないんだ!たっはー、俺って罪な男!
にんまりと。見た目に似合わず含みのある笑顔で早口にそう捲し立てた王馬の言われるがままに、あなたの名字に目を向ける。確かにあなたの名字が髪を結んでいるそれと、王馬が首に巻いているそれは同じ柄のようだった。あなたの名字は髪を結ぶために何重にも巻いているからわかりにくいが、大きさも素材も大体同じようだった。
尤も、その市松模様なんてどこにでもある一般的な模様なのだから、偶然と言ってしまえばそこまでなのだが。

あなたの名字は何も返さない。黙って王馬を見つめている。
王馬小吉
王馬小吉
おりょ?もしかして図星?うわあ、冗談のつもりだったんだけどまさか本当だったなんてね、ごめんねあなたの名字ちゃん!悪気はないんだ!そうだ、お詫びにキー坊の鉄屑でも_
あなた
馬鹿言わないで

ぴしゃり。この教室に来て初めてあなたの名字が喋った言葉は温度のないそれで、感情のない声でそう言ったあなたの名字はそれ以上何かを喋ることもなく静かに踵を返して扉に手をかけた。
彼女なら何倍にもして返しそうなものを。何の理屈も根拠も並べることなくたったその一言だけで否定し、背を向けるなんて。彼女とはつい先程会ったばかりだが、この学園の中では一番長く一緒に居ることもあって謎こそ多いが大体のことはわかったつもりだったのだが。
驚き固まる自分をよそに、そのまま出ていくあなたの名字を慌てて追うべく自分も彼らに背を向けた。
天海蘭太郎
天海蘭太郎
……あまり、からかわないでくださいっすよ


彼らに_いや、彼に向けてそう言い残し、教室の扉を閉める。少し先を歩くあなたの名字の背中にデジャヴを覚えながら、思案する。

先程自分が言った言葉は社交辞令か、個人的なものかはわからないけれど。



初めに一瞬だけ見せたあなたの名字のあの表情が、頭から離れなかった。

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