いつもの軽快な音を軽く聞き流し鼻歌を口ずさみながら食器を洗っているメイコさんの方に歩を進める。
そう尋ねるとメイコさんは少し目を見開いて驚きの表情を浮かべた。
流石に唐突だったな……。
カウンターの奥に姿を消したメイコさんを見届けてから俺は奥のスペースに腰を下ろした。
BGMが静かに響いているのを無心で聞き流す。
暫くして、いつもの芳しい香りが鼻腔をくすぐった。
──刹那。
チリンと、軽快な鈴の音が再び鼓膜を揺らした。
静寂を打ち消すような明るい声が店中に響く。
他愛のないキャッチボールをしながら二人は俺の隣に腰を下ろした。
中々個性的な注文にメイコさんは大人びた笑みを浮かべながら軽く頷き再びカウンターの奥に姿を消した。
白石の元気溌剌な声が店内に響き渡ると同時に俺たちは近頃あった彰人の情報を各々口にする。
二人の共感の眼差しを受けて背中を押された俺はさらに捲し立てる。
謎の理論で自身を免除し彰人の肩出しについて言及をする。
軽く指摘すると白石は意地悪く口角を上げて言葉を重ねる。
その言葉に俺は苦笑いを浮かべる。
白石の言葉は否定できなかった。
以前に比べて荒々しい言葉を使っている彰人を見かける頻度は目に見えて減っていたからだ。
白石は彰人のことをなんだと思っているんだ。
内心そう呟きながら彰人と野良猫の共通点を探ってみる。
……案外、似てるのかもしれないな。
「俺は殴られてしまったし」と付け加えれば今度は二人が苦笑いを浮かべた。
過去の懺悔の言葉を語っていると、品物を手に持ってメイコさんが俺たちの目の前に置いてくれる。
おずおずと尋ねるとメイコさんは顎に手を当てて少し考える仕草を取る。
そうこぼすメイコさんは心の底から楽しそうで俺もついその場面を思い浮かべてみる。
あのあと、ライブ会場から出るときも彰人は未だ興奮冷めやらぬという雰囲気でいつもより声がワントーン上がっていた記憶があった。
余程いい刺激になったんだろうな。
揶揄うように口角を上げてそう言う。
昔から見てきた俺がそれは一番知っている。
彰人がどれほど謙さんを尊敬し憧れてきたか。
しかし、それとこれとは話が違う。
ふと、そうこぼしてしまった。
彰人からあのキラキラとした純粋な眼差しを向けられることが、非常に羨ましくて、嫉妬してしまう。
徐にだがどこか芯のある声が俺を肯定する。
正直、肯定されるとは思わなかった。
つい小豆沢の方に視線を向けると綺麗な双眸が俺を捉えていた。
その瞳の奥底には、計り知れないほどメラメラと炎が燃え上がっているように感じた。
言いたいことを言い切ったのか、それぞれ頼んだ飲み物を口に運ぶ。
それは、間違いなく嫉妬心だった。
自虐的な笑みを浮かべながらポツリと呟くと、二人は揃って眉を下げる。
なんとも言えない空気が俺たちを包み込んだ。
寄り道してしまったのを強引に引き戻し最初の話題に戻る。
「照れている顔」、「何かに夢中になっている真剣な表情」、「素直じゃない」、「勉強をしているときの嫌そうな顔」。
半ばヤケクソのようにポンポンと口にする。
しばらく経ち口の中が乾き始めて俺たちは一次休戦に入る。
背もたれに寄りかかりぼんやりと天井を眺める。
ただ口を動かしただけなのに妙な疲労感があった。
ゆったりとした時間を俺たちは満喫する。
今ここにいない人物を長々と話し続けて、俺たちは充実した一日を送った。
俺の相棒は、かっこよくて、そして可愛い。
そんな人物に三人は見事虜になってしまったみたいだ。
彰人が可愛すぎる件
こんにちは、8です
「彰人くんが可愛すぎる件」をここまで読んでくださりありがとうございます!
なんと、書きたいように書いた結果気がつけばこれで32話です、三日坊主の自分がまさかここまで書き続けられるとはびっくり
そして一周したはずなので今回は久しぶりのアンケートです
アンケート
彰人くんが可愛すぎる件、もう満足した?
まだまだ物足りない!
95%
もうお腹いっぱい…
5%
投票数: 167票
もうお腹いっぱい…の方が投票数多いようでしたらこの作品はこれで完結とさせていただきます
もし続く場合は何がいいんですかね、また同じように一周するか、それとも新しい組み合わせとか…?
まあ、それは追々考えます
それでは、ここまで読んでくれた皆様方、本当にありがとうございました!m(_ _)m















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。