第10話

9.同じ空
21
2026/03/03 00:48 更新
その日の夜。主は何となく3階を散歩していた。すると、バルコニーでひとり佇むルカスの姿を見つけた。
(なまえ)
あなた
ぼくらみつーけあって♪たぐーりあって♪おなーじーそーら♪
ルカス
………貴方は……
そのルカスは、何となく雰囲気が違った。昨日会ったルカスはふんわりとしていて、優しそうな雰囲気だった。そばに置いてあるテーブルにはワインボトルとグラスが置いてあり、彼がお酒を飲んでいることが分かった。
(なまえ)
あなた
あ、ルカス。こんばんは。晩酌中だったの?お邪魔したね。
ルカス
……いえ。丁度私も、貴方にお尋ねしたいことがありましたから。
(なまえ)
あなた
私に聞きたいこと?
ルカス
はい。……貴方が執事を助けるのは、何か目的があるからですか?
最初に出会った時のふわりとした笑顔ではなく、鋭い目つきで問う。ルカスという執事は、思ったより切れ長の瞳で、端正な顔だなと主は思った。
(なまえ)
あなた
え?目的?
ルカス
はい。もちろん最初にお会いした時、私が貴方にお願い致しました。執事を助けるようにと。……ですが、それだけが理由ですか?この屋敷には、ベリアンやフェネスくんのように、主様に対して優しい執事もいますが…主様に対して牙を剥く執事にも、たくさんお会いしたでしょう。
(なまえ)
あなた
うん。なんか噛み付かれたね。でも、敵じゃないよって教えたら、仲良くなれたよ。
ルカス
そこまでされて、それでもなお執事を助けるのは何故ですか?貴方はこの世界を捨てて逃げることだってできます。貴方が指輪を外し、元の世界に戻れば…私たちは貴方を追いかけられません。
(なまえ)
あなた
うん。そうだね。つまりどういうこと?
ルカス
…この行為が貴方にとって何の得にもならない。私たちを従えるにはあまりにも非効率で、非合理的かと思いました。
(なまえ)
あなた
…?従える?何言ってるの?
ルカス
私たちに言うことを聞かせたくて懐柔しているのではないのですか?
(なまえ)
あなた
そんな訳ないでしょ。ただ純粋に、困っている人を助けたい、あなた達と仲良くなりたい、世界の一助になりたい。それだけだよ。
ルカス
…そんな単純な理由で出来るのですか。
(なまえ)
あなた
理由なんてそんなもんでしょ。まあ前の人がどうだったかは知らないけど、私はとりあえずそんな感じかな。
ルカス
…………
ルカスは考え込んだ。主の曇りのない眼を見据え、今までの執事を救った数々の話を思い返す。
ルカス
………貴方はお酒は飲めますか?
(なまえ)
あなた
うん、好き。
ルカス
一杯お飲みください。
(なまえ)
あなた
ありがとう!
疑うことを知らない、純粋な瞳。その気になれば、この人を毒殺することだってできる。毒じゃなくても、これほど細ければ素手で殺せるだろう。
ルカス
……お口にあいますか?
主は疑うことなくワインを1口飲む。するとぱっと顔を輝かせた。
(なまえ)
あなた
ん〜!これ美味しい!好き!
ルカス
…そうですか。ではもう一度問います。なぜ執事を助けるのですか。
(なまえ)
あなた
ん〜なんでだろ!わらってほしいからかな!
主はたった一杯で酔いが回ったのか、舌足らずに答える。
ルカス
笑って欲しいから…?
(なまえ)
あなた
うん!みんながわらってたらね、いつかせかいがへいわになるとおもうの!そしたらわたしもたのしいし!しあわせだよね!
ルカス
………やはり貴方は、非合理的な人だ。
(なまえ)
あなた
ごーりてき?ん〜むずかしいのはわかんない!それよりもういっぱいちょーだい!もっとのむ!
ルカス
いけませんよ、主様。あなたはおそらくお酒に弱いのでしょう。これ以上飲んでは大変なことになります。…さぁ、お部屋に戻りましょう。
(なまえ)
あなた
やーだー!
ルカス
…それとも…私に"何か"して欲しいのですか♪
(なまえ)
あなた
おさけ!
ルカス
いけない子ですね、主様。ほら、戻りますよ。
(なまえ)
あなた
うぅ〜おさけのむ〜……
酒を飲んで幼児化してしまった主の手を引いて、ルカスはにこやかに寝室へ送り届けるのだった。

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