『こんにちは。懲戒部門チーフのレッタです。』
そんな声と共に脳へ入ったのは見窄らしい廊下と不気味な服にアイマスクの様な物をした女性だ。
「どうも。新人のリノです。」
そんなテンプレートの様な文を話す。
『リノさんですね。施設の案内をするので着いてきてください。』
「…..」
正直、L社がこんな場所だとは側から思えなかった。
これなら巣の方が幸せだ。こんな汚らしい所なんてな。
『ここの部屋が今日からあなたの部屋です。地上に忘れ物をしたりしたら社内電話で上層部へお伝えください。』
『あ、言っておきますがもう地上には出れませんよ。』
「え、いや….」
「は?」
なんとも言えない空気が私達を取り囲む。
そんな話契約には無かったはず。それにその服も不気味なんだよ。
….脳が混乱していると辺りに大音量のブザーが響く。
こんな光景見た事ない。
【職員の皆さんへ連絡です。下層《抽出部門》廊下で幻想体[笑う死体の山]が脱走しました。】
【ランク5以下の職員はコントロールチームへ避難してください。】
【特例として抽出部門の職員は総動員で鎮圧へ向かってください。繰り返します…】
脱走?死体?
聞き慣れない言葉が右から左へ流れる。
『それじゃあ部屋に荷物を整理してください。私は鎮圧に向かいます。』
「脱走ってなんのことよ!おい…!」
人間とは思えない速さで女性は遠ざかって行く。
…..ここは落ち着いて荷物の整理でもしよう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。