夜、みんなが寝静まったあと。
シェアハウスは、昼間よりも静かで、
その静けさがやけに胸に沁みた。
自分の部屋に戻ろうとして、
ふと、リビングの電気が消し忘れられていることに気づく。
昔だったら、
「消しとくねー」って言いながら、
誰かと顔を合わせて、
どうでもいい会話をしていた。
――昔だったら。
リビングのソファに目をやると、
そこは今も、何も変わっていない。
形も、色も、配置も。
なのに。
そこに座っていたはずの“私”だけが、
ごっそり抜け落ちたみたいだった。
小さく息を吐く。
理由は分からない。
それなのに、胸の奥が苦しい。
目を閉じると、
勝手に記憶が浮かんできた。
初めてこのシェアハウスに来た日。
緊張して、
どうしていいか分からずに立ち尽くしていた私に、
誰かが笑って言った。
「そんな固くならなくていいって」
その一言で、
肩の力が抜けたのを覚えてる。
リビングで一緒にご飯を食べて、
くだらない話で盛り上がって、
気づいたら夜中になっていた。
「もうこんな時間!?」
「やば、明日早いのに」
そんな会話が、
当たり前みたいに続いていた。
私が落ち込んだときも、
元気なふりをしているときも、
誰かは必ず気づいてくれた。
――ここは、
私の居場所だった。
少なくとも、
私はそう信じて疑わなかった。
現実に戻る。
今のリビングは、
静かで、広くて、
私一人分だけ、余白がある。
同じはずの場所なのに、
こんなにも違うなんて。
声に出してみても、
答えてくれる人はいない。
嫌われた、とは思えなかった。
だって、あからさまに冷たいわけじゃない。
怒られたわけでも、
責められたわけでもない。
ただ、
最初から私なんていなかったみたいに、
扱われているだけ。
それが、一番つらかった。
私は、この家で、
ちゃんと笑ってた。
ちゃんと、必要とされてた。
そのはずなのに。
――ねえ。
もし、私が何か間違えたなら。
せめて、
教えてほしかった。
リビングの電気を消して、
暗くなった部屋を振り返る。
そこに、
私の居場所は、もう見えなかった。
それでも、心のどこかで思ってしまう。
また、あの場所に戻れたら。
そんな願いが、
ひどく虚しくて、
それでも消えなかった。
※ここまで読んでくれてありがとうございます🥹💞
少しずつ違和感が見えてきます‼️
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!